( 318946 ) 2025/08/25 05:56:24 1 00 2024年12月、厚生労働省は2025年度以降の生活保護「生活扶助」に対し、物価高騰を考慮した追加加算を実施する方針を決定しました。
生活扶助は日常生活に必要な費用を賄うものであり、基準額は住民票の市町村や世帯構成などで決定され5年ごとに見直されます。
生活扶助の受給者数は緩やかに減少傾向にありますが、依然多くの世帯が利用しています。
(要約) |
( 318948 ) 2025/08/25 05:56:24 0 00 yoshi0511/shutterstock.com
2024年12月、厚生労働省は2025年度以降の生活保護のうち「生活扶助」について、物価高騰などを踏まえた追加加算を行う方針を決定しました。
すでに2023年度と2024年度の2年間、特別加算として1人当たり月額1000円が支給されていますが、2025年10月からは、さらに500円を上乗せし、月額1500円の加算が実施されます。この措置は2年間の特例で、上昇し続けている生活費の負担軽減を目的としています。
そこで今回の記事では、今回の生活扶助基準の見直しの内容などについて、生活保護制度の概要と合わせて解説します。
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生活保護のうち、食費や光熱費など日常生活に必要な費用を賄うのが「生活扶助」です。厚生労働省は2025年度から2年間、生活扶助基準の特例加算額を現在の1000円から1500円へ引き上げることを決定しました。
生活扶助の基準額は、お住まいの市町村、世帯構成、世帯員の年齢、その他の加算などから計算されますが、生活保護を受けていない一般低所得世帯の消費実態に合わせるため、5年ごとに見直されています。
直近では2022年が検証の年にあたり、物価高騰への対応として2023年度と2024年度の2年間、特例的に月1000円が一律加算され、見直し前より基準額が下がる人には元の水準を維持する措置が取られていました。
今回の改定は、2025年以降も物価上昇の長期化や世帯の消費支出が増加していることを受けて、さらに月500円を上乗せし、合計1500円の加算が決まったものです。
また、加算を行っても見直し前より基準額が減少する人にも、引き続き、元の水準を据え置く措置が継続されます。
2027年以降に関しては、今回と同様、改めて検討するとしています。現在と同じような経済状況が続くなら、再び加算される可能性もあります。
生活保護は、さまざまな事情により、生活が困難になった人に対し、憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障して自立を支援する制度です。
生活保護の申請は国民の権利であり、保護を必要とする場合は誰でも利用することができます。
ただし、生活保護を受けるには生活維持に活用できる、あらゆる手段を先に利用することが求められます。これは「補足性の原理」と呼ばれ、自身の資産や能力、その他のあらゆるものを利用することが保護の条件となります(※)。
※持ち家や自動車など、状況によっては例外もあります。
●生活保護を受給している人はどれくらいか 最新の統計(※令和7年(2025年)5月分概数)によると、被保護実人員は199万861人で、前年同月比で2万2848人減少しています。
また、被保護実世帯数は164万5756世帯で、こちらも前年同月比で6073世帯減少しています。
高齢化の進行や雇用状況の変化に伴い、生活保護利用者数は緩やかな減少傾向にありますが、依然として多くの世帯が生活保護を利用している現状があります。
●生活保護に含まれる「8つの扶助」 生活保護には、生活状況や必要性に応じて支給される8種類の扶助があります。
・生活扶助:食費・被服費・光熱水費など、日常生活に必要な費用 ・住宅扶助:家賃、間代、地代など住居に関する費用 ・教育扶助:義務教育に必要な費用 ・医療扶助:治療や療養に必要な医療費 ・介護扶助:介護保険サービス利用に必要な費用 ・出産扶助:出産に要する費用 ・生業扶助:小規模事業や技能習得に必要な費用 ・葬祭扶助:葬儀に必要な費用 これらのうち、保護の対象となる世帯が必要とするものが支給されます。ただし、全額補填されるとは限りません。また、医療扶助や介護扶助などは実費支給ではなく、直接病院や施設に支払われます。
●生活保護の受給要件 生活保護は、以下の条件を満たした場合に申請・受給が可能です。
・能力の活用:働ける能力を最大限活用すること ・資産の活用:預貯金や不動産など生活維持に使える資産を利用すること ・他制度の活用:年金や各種手当など他の制度を先に利用すること これらを行った上で、世帯の収入が国の定める保護基準額(最低生活費)に満たない場合、その不足分が保護費として支給されます。
生活保護の可否は、厚生労働省が定める保護基準額(最低生活費)と世帯収入を比較して、保護基準額に収入が満たない場合に支給されます。収入が保護基準額を超える場合、生活保護は受けられません。
ここでいう「収入」とは、世帯のすべての給与・賞与などの勤労収入、農業や自営業の収入、年金、仕送り、贈与、不動産収入、手当、財産売却益、保険金、その他の臨時収入などのことです。
勤労収入については、収入から税金や社会保険料、通勤費などの必要経費が引かれ、収入額に応じた基礎控除等が適用されます。控除額分は収入とは見なされません。
【具体的な算出方法】
下記の➀、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)を足した額が最低生活費認定額となります。
➀生活扶助基準 ※今回の1500円の特例は、こちらに加算 (2)加算額(障害者加算・母子加算・児童養育の加算)※該当者がいるときだけ加算 (3)住宅扶助基準 (4)教育扶助基準・高等学校等就学費 (5)介護扶助基準 (6)医療扶助基準
➀〜(4)は、住んでいる地域や世帯構成、世帯員の年齢などによって金額が異なります。また、(4)に関しては、必要に応じて教材費やクラブ活動費などの実費も計上されます。
さらに上記以外にも加算があり、例えば、出産や葬祭があれば、これらの経費の一定額も加算されます。
今回の記事では、今回の生活扶助基準の見直しの内容などについて、生活保護制度の概要と合わせて解説しました。
2025年10月からの1500円加算は、物価高や生活コスト増加への対応として行われるものです。前年度まで続いた加算が今後も2年間続くことで、保護を受けている世帯にとって家計の一助となるでしょう。
生活保護は、生活困窮時に最低限度の生活を保障する最後のセーフティネット。国民一人ひとりが制度の概要を把握しておくことが、私たち自身の将来の安心につながります。
・厚生労働省「令和5年度以降の生活扶助基準の見直しについて」 ・厚生労働省「生活保護制度の概要等について」 ・厚生労働省「『生活保護制度』に関するQ&A」 ・e-Stat「令和7年度 被保護者調査/結果の概要」
土屋 史恵
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