( 319006 ) 2025/08/25 06:59:00 1 00 公的年金は毎年見直され、2025年度は1.9%の増額が予定されていますが、物価上昇に追いついておらず、実質的には年金の価値が減少しています。 |
( 319008 ) 2025/08/25 06:59:00 0 00 Polkadot_photo/shutterstock.com
公的年金は、物価や経済の変化に応じて毎年見直されており、2025年度は1.9%の増額となりました。
とはいえ、その増額は物価上昇に追いついておらず、実質的には年金の価値が年々下がっている状態が続いています。
2025年8月22日には7月の消費者物価指数が公表されましたが、生鮮食品を除く総合指数は前年同月比3.1%上昇。
こうした状況下、年金を受け取りながらも働き続ける高齢者が増えてきています。
実際、総務省の「統計からみた我が国の高齢者」によれば、65〜69歳で52.0%、70〜74歳で34.0%の人が就業しており、高齢者の就業率は過去最高水準を記録しています。
これらの数字からも、「老後は年金だけで暮らせる」という考えが現実的ではなくなってきていることがわかります。
では実際に、「年金のみで生活している高齢者」は、どの程度いるのでしょうか。
本記事では、シニア世代の年金を取り巻く実態について詳しく紹介していきます。
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厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、100%年金だけで生活している人は「43.4%」となりました。
【公的年金・恩給を受給している高齢者世帯】
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4% ・公的年金・恩給の総所得に占める割合が80%〜100%未満の世帯:16.4% ・公的年金・恩給の総所得に占める割合が60〜80%未満の世帯:15.2% ・公的年金・恩給の総所得に占める割合が40〜60%未満の世帯:12.9% ・公的年金・恩給の総所得に占める割合が20〜60%未満の世帯:8.2% ・公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0% 高齢者世帯の過半数は年金収入だけでは生活が成り立っておらず、およそ2世帯に1世帯が就労収入や貯蓄を取り崩して生活費を補っているとうかがえます。
加えて、厚生労働省の同調査によると、65歳以上の高齢者世帯のうち55.8%が「生活が苦しい」と感じていることが明らかになっています。
これらの数字から、公的年金のみでは十分な生活資金を確保できず、経済的に厳しい状況に置かれている高齢者が少なくないことがみてとれます。
では、現在のシニアが受け取っている年金額は、具体的にどの程度なのでしょうか。
次章では、国民年金および厚生年金の平均受給額について詳しく見ていきます。
続いて、厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、「国民年金・厚生年金」それぞれの平均年金月額を見ていきましょう。
●【国民年金】令和シニアが受け取っている平均月額 国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が対象で、保険料は一律で設定されています。
ここで紹介する国民年金の平均受給額は、主にフリーランスや専業主婦など、厚生年金に加入していない人を対象としたものです。
【国民年金の平均受給額】
・〈全体〉平均年金月額:5万7584円 ・〈男性〉平均年金月額:5万9965円 ・〈女性〉平均年金月額:5万5777円 ●【厚生年金】令和シニアが受け取っている平均月額 続いて紹介する「厚生年金」は、主に会社員や公務員が対象の制度で、保険料は収入に応じて決まります(上限あり)。
なお、厚生年金は国民年金に上乗せして支給される仕組みのため、ここで示す厚生年金の金額には「国民年金分」も含まれています。
【厚生年金の平均受給額】
・〈全体〉平均年金月額:14万6429円 ・〈男性〉平均年金月額:16万6606円 ・〈女性〉平均年金月額:10万7200円 ※国民年金の金額を含む
国民年金は保険料が一律のため、受給額に大きな差は出にくいものの、平均月額は約5万円と生活費としては心許ない水準です。
一方、厚生年金は国民年金に上乗せされて支給されるため、受給額は高く、平均月額は約14万円となっています。
厚生年金は収入に応じて保険料が決まるため、受給額には個人差があり、収入が高かった人ほど多くの年金を受け取れる可能性があります。
このように、「受給する年金の種類」や「現役時代の働き方」によって、老後の年金額は大きく変わります。
老後に不安を感じる方は、まずは「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で自身の年金見込額を把握することが重要です。
次章では、シニアの家計事情について確認していきましょう。
総務省「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上・夫婦のみ無職世帯の家計収支は以下のとおりです。
・実収入:25万2818円 ・可処分所得(手取り収入):22万2462円 ・消費支出:25万6521円 ・毎月の赤字額:3万4058円 【消費支出:25万6521円】
・食料:7万6352円 ・住居:1万6432円 ・光熱・水道:2万1919円 ・家具・家事用品:1万2265円 ・被服及び履物:5590円 ・保健医療:1万8383円 ・交通・通信:2万7768円 ・教育:0円 ・教養娯楽:2万5377円 ・その他の消費支出:5万2433円 ・(うち諸雑費:2万2125円) ・(うち交際費:2万3888円) ・(うち仕送り金:1040円) 65歳以上の無職夫婦世帯では、平均的な手取り収入が約22万円に対し、平均的な支出は約25万円と、毎月およそ3万円の赤字が発生しています。
この差は、「平均的な年金収入」と「平均的な生活費」に基づいたものですが、年金収入が多ければ、この赤字を補い、年金のみで生活を賄える可能性も高まります。
とはいえ、前章で触れたように、年金収入の多くは厚生年金で14万円台、国民年金のみでは5万円台とされており、年金だけでゆとりある老後を送れる人は限られるのが実情です。
上記をふまえ、老後を安心して過ごすためにも、まずはご自身の年金見込額を確認し、収支のシミュレーションを行ったうえで、不足分を補えるよう老後資金の準備を進めておきましょう。
本記事では、シニア世代の年金を取り巻く実態について詳しく紹介していきました。
年金だけでは生活が難しいとされる高齢者世帯は全体の43.4%にのぼり、約6割の世帯が年金収入だけでは十分な暮らしを維持できていない状況です。
生活費を補う手段として「働く」という選択もありますが、加齢とともに体力や健康面の不安が増すため、現役時代のように安定して働き続けるのは難しいのが現実です。
だからこそ、現役のうちから老後の収支を見据えたシミュレーションを行い、早期に準備を始めることが重要です。
その際は、預貯金だけに頼るのではなく、資産運用も取り入れることで複利の効果を活かした資産形成が可能になります。
NISAやiDeCoなどの節税制度を活用しながら、計画的に老後資金を備えていきましょう。
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」 ・総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」 ・厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」 ・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」 ・総務省「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
和田 直子
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