( 319806 )  2025/08/28 06:57:09  
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東京都心の不動産市場が中国人を含む外国人投資家による短期的利益追求で歪められ、日本人が住居を得にくい状況が続いている。

東京都千代田区では、マンションの引き渡し後5年間の転売を禁止する特約を不動産協会に要請したが、業界はそれに消極的。

多くの新築マンションが住人不在で、空き家が増えることで地域社会に悪影響を及ぼす恐れがある。

一方、外国人のマンション購入を制限している国がある中、日本は極めて緩い規制を維持している。

さらに、中国人コミュニティが形成され、日本社会との接触が限られ反日感情を育てる懸念もある。

日本が外国人投資者に対する規制を強化し、健全な不動産市場を維持する必要があると指摘されている。

(要約)

( 319808 )  2025/08/28 06:57:09  
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke 

 

東京都心の不動産価格が高騰している。東京都千代田区議で評論家の白川司さんは「中国人をはじめとする海外投資家の短期的な利益追求によって不動産市場が大きく歪められ、日本人が締め出されている」という――。 

 

■「新築なのに住人がいない」衝撃 

 

 2025年7月18日、千代田区は一般社団法人不動産協会に対し、総合設計制度や市街地再開発事業などで販売されるマンションについて、引き渡しから原則5年間の転売を禁止する特約の導入を要請した。 

 

 要するに、区内のファミリー向けマンションなどの一部について、契約者に対して5年間転売を禁じてほしいと不動産協会に求めたということだ。 

 

 千代田区がこのような行動に出たきっかけは、同区が7月上旬に実施したマンションの居住実態調査で、今年完成したある分譲マンションで7割弱の住戸に人が住んでいないという衝撃的な事実が判明したことだった。 

 

■ファミリー層が長く住むエリアだが… 

 

 千代田区は多くの企業本社や学校を抱えており、通勤・通学にも便利なエリアだ。また、子育て支援も充実しており、名門学校や有名塾・予備校が多く進学環境も整っていることから、ファミリー向けマンションの人気が高まっている。 

 

 同区にはもともと単身用マンションが多いが、近年は再開発地区・再開発予定地区を中心にファミリー向け新築マンションも増えており、本来であれば長期的に暮らす住民が定着することが期待できる。 

 

 ところが、千代田区のマンションでは、完売した新築マンションなのに半分近くが住んでいないということが、ごく普通に起こっている。 

 

 なぜこのようなことになったのだろうか。 

 

■区からの要請に不動産協会は冷ややか 

 

 今回の千代田区による異例の要請の狙いは明確だ。 

 

 「住まれないマンションの大量購入」が価格高騰を招き、一般住民の購入機会を奪っているからだ。千代田区は、極端に投機的なマンション購入を抑えて、実需層の居住環境を確保する必要があると判断したのだろう。 

 

 だが、不動産業界側はこの要請に冷淡なようだ。 

 

 記者会見で、不動産協会の吉田淳一理事長は「合理的な規制なのか疑わしい。自由経済の中で、現状では協会としてやる意味は感じていない」と述べ、千代田区に対して正式な説明を求めた。 

 

 同協会の野村専務理事も「実需層を中心に今の市場が生まれているのではないか。区がどのような事実を前提にしているのか理解に至っていない」と反論した。 

 

 法的にも地方自治体が民間の不動産取引を直接規制するのは難しい。条例や法律で縛ることは困難で、現実的には「要請」レベルしか打ち出せないという限界もある。今回もあくまで自治体からの要請であり、条例のような法的な拘束力はない。 

 

■転売益を狙う「転売ヤー」たち 

 

 都心の新築マンション市場では、実需ではない投資目的の購入が急増している。特に同一名義で複数戸をまとめて購入し、転売益を狙うケースが目立つ。 

 

 都心6区(特に千代田・港・中央区の都心3区)では価格上昇が続いているはその立地とブランド力からマンション投資の人気が高く、投機マネーが集中しやすい。こうした投機的購入は、転売時にプレミア価格を上乗せし、周辺相場全体を押し上げる。結果として、一般の購入希望者が手を出せない価格帯にまで跳ね上がり続けている。 

 

 さらに問題なのは、売益狙いの買い手は実際に住まず、空き家状態にすることが多いことだ。空き家が増えると、防犯面のリスクが高まる。 

 

 また、分譲マンションに必要なマンション理事会も定足数を満たず、理事会をスタートすることもままならない恐れすらある。修繕積立金などの滞納も多いと言われている。 

 

 入居者の入れ替わりが激しくなれば、地域コミュニティの活動や自治体が提供する住民サービスにも支障が出かねない。 

 

 これは、コンサートチケットや人気商品を買い占めて転売する「転売ヤー」現象と同じ構造であり、放置すればマンション市場が「転売ヤー」だらけになり社会問題化するのは必至だ。 

 

 何らかの手を打つ必要があるが、いまだに国は目立った動きを見せておらず、当事者の1つである千代田区がやむにやまれず動いた形だ。 

 

 

■中国人富裕層によるマンション投資が急増 

 

 千代田区では近年、外国人人口が急増している。その中でも目立っているのが中国人投資家の存在である。千代田区・港区・渋谷区の不動産取得者のうち、外国人が占める割合は2〜4割程度とみられる。 

 

 中国人向けに不動売買を仲介するサイトや会社が近年目立ってきており、日本のマンション投資への意欲が高いことから、そのうち中国人や中国系が占める割合が高いことが推察される。 

 

 経済が停滞し、住環境が悪化し言論の自由も奪われている中国本土から、富裕層が大量に海外へ資産と家族を移す「避難」現象が進んでおり、日本では東京や大阪、福岡などは避難先=投資先として人気を集めている。 

 

 日本は外国人によるマンション購入に関して、世界的に見ても規制が極めて緩い。外為法や不動産登記法で外国人の取得を制限していないため、購入のハードルが低い。 

 

 それに加えて、政治的安定性や法制度の透明性もあり、安全な資産逃避先として認識されている。 

 

 中国人投資家の多くは、法人名義や個人名義で複数戸をまとめ買いし、所有者として中国人向けウェブサイトなどを使った短期転売で利益を狙う。 

 

 地元の日本人住民にはほとんどメリットがなく、利益は不動産会社や一部投資家に集中する。全国一律の追加課税や保有期間規制がない日本では、この流れを食い止める手段がほぼ存在しない。 

 

■至るところに「小中華圏」が生まれている 

 

 さらに見逃せないのは、こうして購入されたマンションの一部が、実際にはオーナーの居住用ではなく、中国人コミュニティの形成拠点として使われるケースだ。 

 

 中国人移住者の多くは、日本国内に住んでも生活の情報源や交流の大半をWeChat(微信)やWeibo(微博)など中国系SNSに依存している。日常の情報交換、求人、物件探し、買い物、飲食店情報まですべて中国語ネットワークで完結できる。 

 

 こうしたオンライン空間の自前化に加え、物理的な地理集中も起こる。 

 

 東京内には、中国語だけで利用できる飲食店、スーパー、美容室、病院、学習塾などが存在している。WeChatを利用すれば、日常生活のあらゆる面で日本語をほとんど使わずとも生活できるようになっている。 

 

 近年は中国人だけを相手にしている書店が東京に誕生しており、日本文化と交わらない「小中華圏」を形成しつつある。 

 

 東京では池袋や新宿、錦糸町、大阪の心斎橋や天満、福岡の博多などでこうしたエリアが顕著だが、千代田区や港区の高級マンション群でもその懸念がある。 

 

 

■「東京の中心」で反日感情が芽生えかねない 

 

 都市内部に「小中華圏」と呼べるような文化・経済圏が生まれると、日本社会との接触が限定的になる。中国系の金融機関を使っているとすると、その住人が納税しているのか、あるいは商売しているのかつかむことすら難しくなる。 

 

 いくら住人が増えようが、ローカル経済への波及効果がなく、しかもマンション運営を停滞させているとなると、その地域の荒廃も進みかねない。 

 

 最も大きな懸念は、彼らの情報空間が中国語メディアに依存しているため、本国政府の影響を受けやすいことだ。日本に住みながら日本人の価値観に触れる機会がないのであれば、反日感情を育てることになりかねない。 

 

 また、いくら中国人側が日本社会に溶け込みたくても、多くの在外中国人を領事館はマークしており、日中が政治的に対立すれば、国家総動員法などをタテに反日行動するよう指示される可能性は否定できない。 

 

■外国人による不動産購入に警戒を示す国々 

 

 海外の主要都市を見てみると、不動産市場の健全性を守るための防御策を整えてきている。 

 

 たとえば、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでは外国人による住宅購入を部分的に禁止している。ロンドンなどの大都市では、外国人が2軒目以降を購入する場合、追加課税や保有条件を課すのが一般的である。 

 

 また、シンガポールでは外国人は1軒目の購入から追加印紙税(60%)が課され、短期転売にも課税している。また、香港は24カ月以内の転売に高率の特別印紙税20%を課しており、転売目的を抑え込む実質的な制裁金となっている。 

 

 いずれも自国民とは差別化を図っており、外国人によるマンション取得へのハードルを大きく上げている。 

 

 これらの国や地域は「居住の安定」を政策目的に掲げており、国籍を問わず投機的な買い占めを抑制している。 

 

 日本はこういった不動産に関する外国人投資の規制をしていない。 

 

 

■「マンションのメルカリ現象」を止めるには 

 

 千代田区の「5年間転売禁止」や「同一名義での複数購入禁止」の要請は、法的拘束力こそないが、「マンションのメルカリ現象」を止めるには有効であるはずだ。 

 

 そのうちどれくらいが中国人や中国系組織によるものかはわからないが、中国では日本の不動産専門の業者が数多くあり、かなりを占めていることが推察される。 

 

 現状の日本においては無茶な外国人投資を抑制する数少ない実効性ある抑止策だろう。投機マネーの流入を止めることはできないとしても、短期転売目的の購入を減らす効果は期待できる。 

 

 特に中国人を含む海外投資家の一部は、短期間での資産回転を前提としているため、保有期間条件は心理的な抑止力になる。 

 

 ただし、抜け道は存在する。たとえば複数名義を使う、法人を経由するなどすれば規制の回避は可能である。 

 

 それでも、何の規制もない現状よりは、明確な「線引き」を示すことで市場全体にメッセージを送り、規制に向けて国を動かす原動力となり、意義は大きい。 

 

■罰則のない行政指導では効かない 

 

 今後については、大きく分けて3つの課題がある。 

 

 1つは、国レベル・都道府県レベルでの制度の法的強化だ。現状は行政指導にとどまり、従わない場合に罰則はない。これでは実効性が薄くなってしまう。国・都道府県レベルでの住宅市場安定化政策が不可欠だ。 

 

 2つめは、全国的な規制の導入だ。外国人購入に対する追加課税や保有期間条件など、海外で一般的な措置を日本でも検討すべきである。金融資産と紐付けしたマイナンバーを外国人居住者に普及させることも効果的だろう。 

 

 3つめは、実態調査と情報公開である。千代田区が実施したような居住実態調査を継続的に行い、空き家率や投資目的購入の割合を可視化して共有する必要がある。可能であれば、そのうち外国人投資がどれくらいを占めるかも割り出したい。それに加えて、「小中華圏」化の兆候についてもモニタリングし、地域社会の分断リスクを事前に把握するべきだろう。 

 

 

 
 

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