( 320816 )  2025/09/01 05:55:53  
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日本での米価の高騰と不作により、備蓄米の店頭販売が開始されたが、現在は多くが売れ残っている。

消費者は品質を重視し、備蓄米の需要が低下している。

一方、新米の価格は過去最高に達し、2024年産も高止まりが予測されている。

過去の「平成の米騒動」のように、緊急輸入が必要になる可能性もあるが、消費者の間にはタイ米に対する抵抗感がある。

現実的な解決策として、輸入米を主食用として流通させる必要がある。

気候変動の影響もあり、日々の米供給は国内のみでは難しくなっているため、外米との共存が重要であることが示唆されている。

(要約)

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随意契約の備蓄米が店頭販売開始された当時(2025年5月30日、写真:ロイター/アフロ) 

 

 米価の高騰と不作が重なり、今年の日本の食卓は大きな転機を迎えている。政府が放出した備蓄米は放出直後こそ注目を集めたが、いまや売れ残りが目立つ。新米価格は過去最高水準に達する見込みで、消費者の負担増は避けられない。 

 

 かつて「平成の米騒動」で経験したように、輸入米をわれわれの食卓にどう位置づけるか。それがいま再び問われている。 

 

■備蓄米が百袋単位で売れ残った店舗も 

 

 スーパーの一角に積まれた「備蓄米」が、今年ほど注目を集めた年はないだろう。 

 

 政府が市場に放出した備蓄米は、発売当初こそ人が集まり、安さにひかれて買い物かごに入れる客の姿が目立った。しかし熱気は長く続かない。特売が終われば動きは鈍り、気がつけば店頭に袋が積み残されたままになった。 

 

 ある市場調査会社の分析によると、消費者はコメの品質や安全性への志向が戻り、備蓄米の積極的な購入動機はシュリンクしているという。安いだけでは売れないということだ。 

 

 消費者の志向以外にも、備蓄米の売れ行きが落ちた背景には構造的な問題がある。備蓄米の販売期限は納入から原則1か月以内と定められているのだ。期限を過ぎれば棚から下ろさざるを得ない。そのため百袋単位で売れ残った店舗もあるという。 

 

 今年のコメは高い。農林水産省の統計によると、8月第1週のスーパーにおける5キロ袋の平均価格は3737円。前週から195円も跳ね上がり、統計開始以来最大の上昇幅となった。銘柄米は4239円に達し、ブレンド米も3000円を超える。 

 

 流通経済研究所の予測では、今年の新米は5キロあたり4200~4500円程度に落ち着く見込みだという。2024年産と同等以上の高止まりが続くことになる。今夏、日本列島を襲った渇水と水不足が新米にどう影響するかも、懸念材料だ。 

 

■「平成の米騒動」ではタイ米に抵抗感 

 

 われわれがこういう状況に直面するのは初めてではない。 

 

 多くの人が思い出すのは、1993年の「平成の米騒動」であろう。この年は歴史的な冷夏で稲は実らず、政府はタイや米国、中国から合わせて約260万トンものコメを緊急輸入した。 

 

 日本の食卓に、突然長粒種のタイ米が並んだ。「パサパサして食べにくい」「味噌や醤油には合わない」などと戸惑う声が広がり、学校給食でも子どもたちが箸を止めた。国産米の値は跳ね上がり、その混乱は数か月に及んだ。 

 

 あれから32年の歳月を経て、われわれは再び似た局面に立っている。備蓄米の放出は応急処置として一定の役割を果たすと評価してよかろうが、しかし蓄えには限界がある。備蓄制度は凶作時の保険として設けられているが、全国規模の不作の前には持続力に乏しい。すでに農水省は備蓄米の販売期限を1か月以上に延長するなどの対応を取ったが、蓋を開けてみれば数日の猶予に過ぎず、現場の混乱を収めるにはいささか力不足だ。 

 

 となると、残された現実的な選択肢は、輸入米を主食用に回すことだろう。農水省はSBS(売買同時入札)方式で輸入を続けてきたが、その多くは業務用や加工用にとどまっている。制度をもっと柔軟に運用し、主食用としての流通を増やさなければ需給のひっ迫は避けられまい。 

 

 外米に抵抗を覚える人は少なくない。しかし昨今の気候変動の激しさはだれの目にも明らかであり、現状ではコメの供給を国内だけに頼り切るのは難しい。日本人が日本のコメを主食に据え続ける限り、国内の豊作不作に右往左往させられてしまうのは避けられない。だからこそ外米との共存を「例外」ではなく「前提」とする覚悟が求められる。 

 

 政府は緊急輸入に備えた法整備や暫定措置を準備すべきであり、消費者もまた「コメの多様性」を前向きに受け入れる必要がある。 

 

 

 
 

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