( 322096 )  2025/09/06 04:45:53  
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「無敵の人」という言葉が使われる中、自民党員の間では石破茂首相がそのような存在になりつつあるという。

石破首相は、衆議院解散を示唆し、「総裁選挙を行う場合には解散する」と述べた。

最近の世論調査で内閣支持率が上昇したことから、自信を深めたようであるが、党内の雰囲気は9月2日の総会で一変し、石破首相の地位を脅かす動きが加速している。

 

 

幹事長や他の党役員からの辞意表明が相次ぎ、更には歴代の自民党の重鎮たち間でも石破首相に対し「けじめ」を求める声が上がっている。

議員らは、石破首相に衆院解散の選択肢を示唆したのは元幹事長の山崎拓であるとの見方を示している。

 

 

石破首相は党幹部を辞任させる意向はなく、彼らが解放されない限り、9月末の任期満了までの状態が続く。

ある自民党議員は、「経済政策に関する期待が薄く、議席数が減らないはずがない」と懸念を示している。

石破首相の進む道は誰にも止められず、党内外に影響を及ぼしながら進んでいる。

解散が実現した場合、批判的な声が上がる可能性もある。

 

 

(要約)

( 322098 )  2025/09/06 04:45:53  
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社会的に失うものが何もないために、何の躊躇もない人を意味する「無敵の人」。多くの自民党員から見ると、最近の石破首相はそうなりつつあるのかもしれない(写真:時事) 

 

 「石破茂首相が『総裁選挙が行われることになれば、衆議院を解散する』と言っているようだ」 

 

 9月4日夜に筆者の元に入って来た情報によると、石破首相は「9月16日公示・28日投開票」を主張しているという。8月に行われた報道各社の世論調査で内閣支持率が急上昇したため、石破首相が自信を深めたらしい。 

 

 確かに、8月23・24日に行われた共同通信の世論調査では、内閣支持率は前月比12.5ポイント上昇の35.4%で、22日から24日まで行われた読売新聞とNNN(日本ニュースネットワーク)の共同調査でも同17ポイント増の39%と、いずれも大きく上昇した。 

 

 総裁選前倒しについて多くの自民党議員がその態度を鮮明にしなかったことも、石破首相がその地位にとどまれると思った原因になったに違いない。 

 

■空気を一変させた石破首相の“締め”のあいさつ 

 

 しかし、9月2日の両院議員総会で、その空気は一変した。総会に出席したある議員はこう打ち明ける。 

 

 「石破首相が冒頭で述べたあいさつはとても良かった。現状を真摯に受け止める姿勢が見て取れた」 

 

 問題は、森山裕幹事長が辞意を含ませて“まとめ”のあいさつをした後に、石破首相がまたマイクを持ったことだった。 

 

 「両院議員総会の流れとしては、森山幹事長のあいさつで終わりになるはずだったが、石破首相はどうしても森山幹事長を慰留したかったのだろう。しかし、その内容はグダグダと意味不明で、タイミング的にも石破首相が発言すべきだとは思えなかった」(同) 

 

 このときから一気に「石破降ろし」は加速する。すでに辞意を漏らしていた森山氏は石破首相に進退伺を出し、ほかの党3役も辞意を表明していたが、9月4日には小渕優子組織運動本部長も石破首相に辞意を伝えている。 

 

 また同日午後には国会内で、遠藤利明元総務会長や山口俊一元沖縄・北方担当相、石田真敏元総務相、新藤義孝元総務相といったベテラン議員が会合を開催。「(総裁選を求める9月8日の署名提出期限の前に)石破首相がけじめをつけるべきだ」など意見を交換した。 

 

 注目すべきは、この会合に渡海紀三朗前政調会長や田村憲久元厚生労働相も参加していたことだ。渡海氏は石破首相と1986年の同期当選で、ともに「ユートピア政治研究会」を結成して政治改革を語り合った同志であり、田村氏は石破首相が率いた水月会の元メンバーで、石破首相の側近と見なされていたからだ。 

 

 

■石破首相に「解散」を吹き込んだのは誰か 

 

 石破首相としては「禊(みそぎ)を受けるべきは自民党で、自分ではない」ということだろうが、現在国会は閉会中。そして、これまで閉会中に衆議院が解散された前例はない。 

 

 しかし、衆院議員が参集した衆院本会議場でしか衆議院を解散できないわけではない。1986年6月の「死んだふり解散」では、衆院議長応接室で解散詔書が読み上げられている。 

 

 当時の中曽根康弘首相は1983年の「田中判決選挙」で失った36議席を挽回するため、与党に有利とされる衆参同日選をもくろんだ。ただ、1983年の衆院選については、最高裁が1985年7月に「憲法上要求される合理的期間内の是正が行われなかった」として違憲判決を出したため、野党が定数是正を行わずに衆院選を行うことに強く反対していた。 

 

 しかし、1986年5月の東京サミットを成功裡に終えた自信と、秋の総裁選で「安竹宮」(安倍晋太郎、竹下登、宮澤喜一の3氏)が台頭しつつあった懸念から、中曽根首相はどうしても近日中の衆参同日選にこだわった。 

 

 そこで、投開票日を当初の6月22日から定数是正の周知期間満了後の7月6日に変更し、それを秘匿したまま6月2日に臨時国会を召集。同日に議長応接室で衆議院が解散され、自民党は50議席増の300議席(追加公認で304議席)を獲得した。「死んだふり解散」と揶揄されるのはこのためだ。 

 

 当時の中曽根首相の指示の下で、衆院解散に動いていたのが第2次中曽根第1次改造内閣で副官房長官を務めていた山崎拓元幹事長だった。解散に反対していた金丸信幹事長(当時)と水面下で交渉し、納得させた。 

 

 ある関係者は「衆院解散という選択肢を石破首相に吹き込んだのは、山崎元幹事長ではないか」と、いぶかしむ。山崎氏は石破応援団の筆頭格で、「石破降ろし」に強く反対しているからである。 

 

 動機は十分だ。山崎氏は「石破降ろし」の急先鋒である麻生太郎最高顧問と犬猿の仲で、福岡県知事選などをめぐって鋭く対立してきた。よって「石破降ろし」を潰すことができるなら、麻生氏に一矢報いることになる。 

 

 

 その山崎氏は8月24日、石破首相や小泉純一郎元首相らと会食した。小泉氏が2005年の郵政選挙で296議席も得て大勝した経験を語り、石破首相に政権運営のアドバイスを行ったとされるが、小泉氏は現在の政局にさほど関心を示さなかったようだ。 

 

 「実際の主催者は山崎氏で、話題を呼ぶために小泉元首相を参加させたのだろう。会食の狙いは、石破首相に衆院選に踏み切らせることに違いない」と同関係者は推測する。 

 

■“暴走”する石破機関車の行方 

 

 目的のためには手段を選ばないといった風潮になっている。実際に石破首相は森山氏をはじめ、党幹部を辞任させるつもりはない。石破首相が“次”を任命しない限り、9月末の任期満了まで彼らは解放されないことになる。 

 

 「こんな状況で衆議院を解散しても、自民党は勝つことができるのか」と、ある自民党議員は自嘲ぎみに話した。「そもそも石破首相には『何がなんでも、これをやりたい』というものが見えてこない。しかも、国民が最も期待する経済政策はゼロに等しく、これで議席が昨年以上に減らないと思うこと自体がおかしくないか」(同)。 

 

 石破首相の“暴走”は誰も止められず、ひたすら周囲を巻き込みながら進んでいく。そのような石破氏の下で衆議院が解散されるなら、「死なばもろとも解散」と名づけるほかない。 

 

安積 明子 :ジャーナリスト 

 

 

 
 

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