( 322666 )  2025/09/08 05:55:11  
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近年、消費者を意図しない不利な選択へ誘導する「ダークパターン」が増加しています。

東京科学大学のシーボーン・ケイティー准教授の調査では、国内の人気アプリ200個中93.5%でダークパターンが確認され、多くの手法が用いられています。

商品の不正な販売や詐欺被害も発生しており、ダークパターンによって消費者が心理的プレッシャーを感じる状況が多く見受けられます。

 

 

特に、解約が難しいサブスクリプションや偽の在庫表示が問題視されており、この被害は年間で約1兆円にも達するとの調査結果があります。

日本にはダークパターンを包括的に禁じる法整備が不十分で、今後の法改正や消費者保護が求められています。

消費者自身も事前に注意深く確認することが重要です。

(要約)

( 322668 )  2025/09/08 05:55:11  
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不利な選択へ誘導する“ダークパターン”の実態 

 

 「通販で注文した商品が、勝手に定期購入になっていた」「サブスクをようやく解約できたと思ったら解約料を取られた」――このように、消費者を不利な選択へ巧みに誘導する手法「ダークパターン」の被害が増えているという。 

 

 東京科学大学のシーボーン・ケイティー准教授が、ショッピングや音楽、ゲームなど、国内向けの人気アプリ200個を調べたところ、さまざまなダークパターンが発見された。購入者を焦らせる「カウントダウンタイマー」や「在庫残り1個」といった表示、さらに悪質なケースでは、「残り1個」とされていた13万円のパソコンが、下にスクロールすると目立たない場所で同じ商品が12万円台で販売されていた。アプリ200個のうち93.5%で「ダークパターン」を、平均で「3.9」種類の手法を確認したということだ。 

 

 中には、犯罪被害に巻き込まれた人もいる。20代後半の烏賊さんは5月、欲しかったバイクのパーツを通販で見つけた。「生産中止のパーツが1点限りで、約半額でセールされていた」と思い購入するも、商品が届かず、サイトに記載された連絡先に問い合わせても電話はつながらない。「1万円もいかなかったが、ちょっとした勉強代として諦めがついた」。 

 

 実際に番組スタッフがその住所を訪ねると、そこは京都の山の麓にある住宅街。建物の関係者に確認したところ、全く身に覚えがなく、勝手に住所が使われていると話す。その後の調査で、会社自体が実在しないことが判明。つまり最初から詐欺だったのだ。 

 

OECDが示す「ダークパターン」の類型 

 

 「ダークパターン」被害に関する調査で、30%の人が過去1年間で意図しない契約・購入などで金銭的被害を受けたと回答した。1人当たりの年間被害額は平均3万3670円〜5万3361円で、推定被害総額は年間約1兆575億円〜約1兆6760億円にも上る(「Webの同意を考えようプロジェクト」調べ、2024年調査で対象は国内の20歳以上のネット利用者500人)。 

 

 2024年に発足した一般社団法人「ダークパターン対策協会」の石村卓也事務局長は、「解約しづらいパターンや、知らないうちに定期購入になっているパターン、『残りわずか』『何人の人が見ている』といったパターンが横行している。事実であれば有益な場合もあるが、複数を組み合わせて、消費者を焦らせて購入させる例が多い。冷静であれば考えられるのに、勢いでクリックするように誘導するのが、ダークパターンの典型例だ」と説明する。 

 

 山田さん(仮名・50代)は今年7月、欲しかった工具セットをサイトで発見した。3万6000円程度の商品が9600円で販売され、「残り5点」となっていたため購入を決意。翌日コンビニで支払うも、商品は届かなかった。その後、メールで問い合わせるも返信はなく、サイト自体が抹消した(購入手続きのメールには実在する無関係の会社名)。ITサポートの会社を営み、普段から気をつけているが、初めて被害に遭った。 

 

 石村氏はこのケースを「金融犯罪の1つでもあるネットショッピング詐欺」だと判断する。「詐欺の入口として、ダークパターンが使われている。『在庫残りわずか』や、あり得ないようなディスカウント率もダークパターンの特徴だ」。 

 

 ダークパターンを行う企業の例としては、企業側が「他もやっているから」と業者に依頼するケースや、業者側が「こっちのほうが儲かるから」と提案するケースがある。「この動画限定!」と謳うスマホ向けの広告動画も考えられ、“正直者がバカを見る”状態になっているという。 

 

 石村氏は、大手サイトでも注意が必要だと警鐘を鳴らす。「詐欺事案はなくても、多かれ少なかれダークパターンが使われている。『お客様満足度No.1』『何冠達成』なども、都合のいいアンケートの採り方により、ウソの場合がある」「企業の担当者が、短期的な売上を追求するあまりそうしたデザイン手法を取り込む。特に中小企業では、外注先から“間違った勝ちパターン”を勧められ、採用してしまうこともある。企業側も気付かないうちに加害者になっている状況がある」。 

 

 一方、マーケティングの一環ではないかとの指摘には、「デザインの創意工夫にブレーキをかけてしまうため、バランスを取るのが非常に難しい。しかし消費者の観点からは、心理的なプレッシャーを感じさせるものは線引きされるべきだ」との考えを示した。 

 

 

「ダークパターン」に関する経営者の意識調査 

 

 ダークパターン対策として、欧米では法整備が進んでいる。EUでは2024年、「デジタルサービス法」が全面施行され、消費者を欺くサイトの設計自体が禁止された。米国では「連邦取引委員会法(FTC法)」で、不公正または欺瞞的な行為・慣行を幅広く禁じている。一方、日本ではダークパターン全体を包括的に禁じる法律はない。 

 

 石村氏は「欧米では当局に裁量が与えられていて、法律としては包括的な条文になっている。FTCの条文はふんわりとしており、あとは消費者目線で被害が大きいものを、当局の裁量で取り締まっている。ケース・バイ・ケースで当局が線引きする柔軟さが特徴だ」と説明する。 

 

 消費者問題に詳しく、被害の相談も受ける「なにわ総合法律事務所」の吉岡康博弁護士は、「手法が多岐で包括的に網にかけるのは難しく、個別に見ていくしかない」としつつ、「特定商取引法」や「景品表示法」などで対応し、消費者庁が業務改善や停止の処分を下せるケースもあると語る。関係省庁が協力し法改正すべきだが、実効性に限界もあると考えており、例えば「在庫残り●点」と表示していた場合、実際の在庫を確認することは困難だという事例を示す。 

 

 石村氏が所属する一般社団法人「ダークパターン対策協会」では、これまで企業に求められるガイドラインの公表(政府と連携し作成)や、通報窓口の設置などの取り組みを行ってきた。また10月からは、誠実なサイトを認定する制度の運用を開始する。企業からの申請を受け付け、企業が自己審査し、協会などの審査(有料)を経て、認定される。認定サイトに認定マークを付与(1年更新)するほか、認定企業名も公開される。 

 

 認定にあたっては、画面ごとに審査の範囲が定められるという。「例えば、購入前の最終確認画面には、認定マークと『最終確認画面について認定している』というアイコンを付ける。訪問者の閲覧履歴を収集して、興味関心に合わせた広告を出すCookie(クッキー)の取得同意バナーでも、『同意ボタンしかない』『拒否しても裏で情報が取られ続けている』といったダークパターンが横行している。これも審査対象だ」。 

 

 また、自身で気をつける必要もあるという。石村氏は「消費者庁が公表する事例集などでダークパターンについて知る」「購入前に一度立ち止まり冷静に」「支払額、契約期間、解約の条件や方法など、最終確認画面をよく確認(スクショで保存も)」「サイトの評判を事前に確認」「もしトラブルになれば消費生活センターへ」といった点をアドバイスした。(『ABEMA Prime』より) 

 

ABEMA TIMES編集部 

 

 

 
 

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