( 326361 ) 2025/09/22 05:49:06 1 00 2025年10月より、長引く物価高騰を受けて生活保護の「生活扶助」が特例的に月額1500円に加算されます。
生活扶助は食費や光熱費を賄うために支給されるもので、基準額は地域や世帯構成によって異なり、5年ごとに見直されます。
生活保護制度は、憲法25条に基づき、健康で文化的な最低限度の生活を保障するもので、必要な条件を満たすことで受給が可能です。
最後に、生活保護が必要な場合はためらわずに行政に相談することが推奨されています。 |
( 326363 ) 2025/09/22 05:49:06 0 00 years44/shutterstock.com
長引く物価高騰を踏まえて、2025年10月より、生活保護における「生活扶助」が特例的に加算されます。
すでに2023年度と2024年度の2年間は、一人あたり月額1000円が特別加算されていますが、2025年10月からはさらに500円を上乗せし、月額1500円となります。
この措置は2年間の臨時的・特例的な対応であり、長引く生活費の上昇による家計負担を軽減することを目的としています。
そこで今回の記事では、生活扶助基準の見直しについて、生活保護制度の概要と合わせて解説します。
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厚生労働省は、2025年度(令和7年度)と2026年度(令和8年度)の臨時的・特例的な対応として、生活扶助基準の加算を現在の月額1000円から1500円に引き上げることを決定しました。※入院患者や介護施設入所者は1000円
加算を行っても見直し前と比べて基準額が減額となる世帯については、従前の水準を維持する措置が取られています。
生活扶助は、生活保護のうち、食費や光熱費など日常生活に必要な費用を賄うために支給される扶助のひとつです。
生活扶助の基準額は、住んでいる地域(市区町村)、世帯構成、世帯員の年齢、各種加算などで決まりますが、一般の低所得世帯の消費実態に合わせるため、原則として5年ごとに見直しが行われています。
直近の検証は2022年に行われ、このとき、物価高騰への対応として2023年度と2024年度の2年間、一律で月額1000円の特例加算が導入されました。
今年度と来年度は、前述したように500円が追加され、1500円が加算されますが、2027年度以降については、社会経済の状況を見ながら改めて検討することになっています。
今後も同様の経済環境が続く場合には、再度加算が行われる可能性があります。
最新の統計(※令和7年(2025年)6月分概数)によると、被保護実人員は199万8497人で、前年同月比で2万1983人減少しています。
また、被保護実世帯数は164万5202世帯で、こちらも前年同月比で約4935世帯減少しています。
高齢化の進行や雇用状況の変化に伴い、生活保護者の数は緩やかな減少傾向にあります。
しかし、依然として多くの世帯が生活保護を利用していることがわかります。
生活保護は、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、生活困難者の自立を支援する制度です。生活保護を申請することは国民の権利であり、保護を必要とする方は誰でも利用することができます。
ただし、生活保護を受けるには、生活維持のため、あるゆる手段を先に利用することが求められます。
このことを「補足性の原理」と言い、保護を受けようとしている方の保有資産や能力など、すべて活用することが生活保護を受ける前提となります。※自宅や自動車など、状況によって例外となる資産もあります。
生活保護には、生活状況や必要性に応じて以下の8種類の扶助が支給されます。
・生活扶助:食費・被服費・光熱水道費など日常生活費 ・住宅扶助:家賃や地代など住居費 ・教育扶助:義務教育に必要な費用 ・医療扶助:医療にかかる費用 ・介護扶助:介護保険サービスにかかる費用 ・出産扶助:出産に必要な費用 ・生業扶助:技能習得や小規模事業に必要な費用 ・葬祭扶助:葬儀にかかる費用 上記のなかで、保護世帯が必要なものが支給されます。ただし、全額が支給されるわけではありません。また、医療扶助や介護扶助は現金ではなく、病院や施設へ直接支払われます。
生活保護は、以下の条件を満たした場合に支給されます。
・能力の活用:就労可能であれば働くこと ・資産の活用:預貯金や不動産などを利用すること ・他制度の活用:年金や手当など他の制度を優先的に利用すること これらを行っても、収入が国の定める最低生活費に満たない場合、不足分が生活保護費として支給されます。
支給額は、厚生労働省が定める保護基準額と世帯収入を比較し、収入が基準に満たない場合に差額が支給されます。
収入には給与や年金、仕送り、各種手当などが含まれます。勤労収入については、収入から税金や社会保険料、通勤費などの実費が控除され、さらに収入額に応じた基礎控除も差し引かれた額になります。
【具体的な算出方法】 下記の➀、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)を足した額が最低生活費認定額となります。
➀生活扶助基準 ※今回の1500円の特例は、こちらに加算 (2)加算額(障害者加算・母子加算・児童養育の加算)※該当者がいるときだけ加算 (3)住宅扶助基準 (4)教育扶助基準・高等学校等就学費 (5)介護扶助基準 (6)医療扶助基準
➀〜(4)は、住んでいる地域や世帯構成、世帯員の年齢などによって金額が異なります。また、(4)に関しては、必要に応じて教材費やクラブ活動費などの実費も計上されます。
さらに上記以外にも加算があり、出産や葬祭があれば、これらの経費の一定額も加算されます。
今回の記事では、生活扶助基準の見直しについて、生活保護制度の概要と合わせて解説しました。
物価の上昇により、特に、ひとり親世帯や年金生活者世帯の暮らしが厳しさを増しています。
一方で、突然の病気や介護離職などで収入が減少し、思いがけず生活が困窮する場合もあります。
生活保護を受けることは国民の権利です。保護が必要な場合はためらわず、行政の窓口に相談することをおすすめします。生活保護制度の仕組みについても、いざというときのために理解しておくと安心です。
※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。
・厚生労働省「令和5年度以降の生活扶助基準の見直しについて」 ・厚生労働省「社会・援護局関係主管課長会議資料 令和7年3月」 ・厚生労働省「生活保護制度の概要等について」 ・厚生労働省「『生活保護制度』に関するQ&A」 ・e-Stat「令和7年度 被保護者調査/結果の概要」
土屋 史恵
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