( 326611 )  2025/09/23 05:33:47  
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2025年1-8月における全国の休廃業・解散件数は4万7078件で、前年同期比9.3%増加しました。

この増加は3年連続で、2025年中に初めて年7万件の大台に達する可能性があります。

休廃業した企業の64.1%が資産超過型であり、黒字企業の割合は49.6%と過去最低に達しました。

経営者の平均年齢は71.65歳で、70代の割合は減少傾向にありますが、50代や60代の参入が増えています。

今後は「前向きな廃業」の考えが進む一方で、連鎖廃業のリスク軽減に向けた対応も必要とされています。

(要約)

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年別休廃業・解散件数 推移 

 

 2025年1-8月に全国で休業・廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む、以下「休廃業」)は4万7078件となった。前年同期(4万3071件)を9.3%上回り、3年連続で増加した。2024年以降、休廃業・解散件数は増加ペースを早めており、年間では現行基準で集計を開始した2016年以降で最多だった前年を上回り、初めて年7万件台に到達する可能性がある。 

 

 2025年1-8月に休廃業となった企業のうち、総資産(保有資産の総額)が債務を上回る状態で休廃業した件数=「資産超過型」の割合は64.1%を占め、2016年以降で最高となった。また、休廃業する直前期の決算で当期純損益が「黒字」だった割合は49.6%となり、8月までの速報値ながら初めて50%を下回り、集計を開始した2016年以降で過去最低を更新した。この結果、「黒字」かつ「資産超過」状態での休廃業が判明した企業の割合は全体の16.2%を占めた。2025年の休廃業・解散動向は総じて、直近の損益が悪化した企業が多い点が特徴となる。 

 

「資産超過型」「黒字」休廃業・解散 割合 

 

 2020年から2022年にかけて、企業の休廃業・解散件数は持続化給付金や雇用調整助成金など「給付」による手厚い資金繰り支援策を中心に功を奏し、コロナ禍の厳しい経営環境下でも抑制された水準で推移してきた。しかし、2023年以降はこれらの支援策が徐々に縮小されたほか、電気代などエネルギー価格をはじめとした物価高、代表者の高齢化や後継者問題など四重・五重の経営課題が押し寄せた。 

 

 こうした厳しい事業環境のなかで、事業再生ガイドラインをはじめ、近時は経営者の再挑戦や、引退後の生活基盤の保証などを目的とした「円満な廃業」を後押しする動きが進み、官民による廃業支援が充実してきた。そのため、自社の事業や業界全体の将来性が見通せず、現状のままではさらなる業績悪化が避けられないと判断した中小零細企業において、手元資金に余裕があるうちに会社を畳むことを決意した、余力ある「あきらめ廃業」が増加した可能性がある。 

 

 

代表者年代別 休廃業・解散 割合 

 

 休廃業・解散時の経営者年齢は、2025年1-8月平均で71.65歳となった。前年に続き5年連続で70歳代となったものの、前年から0.03歳低下した。最も休廃業が多い年齢も、2025年は8月までの集計で74歳と、前年同期に比べて1歳低下した。休廃業・解散を決断する経営者の年齢は、上昇傾向が続いたこれまでのトレンドから異なる動きを見せている。 

 

 年代別にみると、「70代」(39.6%)が最も高いものの、前年同期(40.7%)を大きく下回り、2024年以降は低下傾向にある。他方、「50代」(11.3%)、「60代」(19.9%)は共に前年同期を上回り、現役世代で市場からの退出を決断した企業が増加した。「80代以上」(24.7%)も前年同期から上昇しており、体力面からも後継者への事業承継活動が困難となり、休廃業・解散を余儀なくされた可能性がある。 

 

 2025年の休廃業・解散動向は、12年ぶりに年間1万件台への到達が見込まれる企業倒産(法的整理)と同様に、増加傾向で推移している。ただ、企業倒産件数に比べると休廃業・解散件数の伸び率は高く、企業の「退出」がさらに加速している。特に、平常時であれば安定した事業継続が可能な「資産超過」の割合が過去最高となった一方、損益面で「黒字」の割合が低下するトレンドが前年に比べて強まっており、余力があるうちに事業を畳む動きが広がっている。 

 

 足元では、人手不足や後継者の選定など経営上の課題が山積するなかで、「自力での事業継続」か「円満な廃業」か、将来を見据えた経営判断を迫られる中小企業は少なくない。中小企業支援の軸足が「資金繰り」から、抜本的な「事業再生」へと変化するなかで、無理に事業を続けて経営資産を目減りさせた結果、廃業のステップを踏むこともできない状態へ至るよりも、M&Aなどを活用してあらかじめ経営資産を第三者に引き継いだうえで事業を畳む方が望ましいという「前向きな廃業」の考え方は、今後さらに広く浸透していくものとみられ、年間での休廃業・解散は7万件台への到達も予想される。 

 

 一方で、「経営者保証に関するガイドライン」の改定をはじめとした各種廃業支援による市場環境の整備と同時に、取引先の突然の廃業を未然に防ぐ「サプライチェーン事業承継」といった考え方の導入など、高まる連鎖廃業・連鎖倒産のリスクをいかに軽減するかといった取り組みも、中小企業支援策として同時並行で進めることが求められる。 

 

 

 
 

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