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近年、推薦入試の中でも特に指定校推薦と付属校からの内部推薦が増加しているが、学力基準も厳しくなっており、勉強量も増加。

大学付属校の内部進学が多くなり、学生を優秀に育てることが求められている。

一方で、指定校推薦は過渡期を迎えており、退学者の増加や学力不足の問題が浮上している。

これにより、大学側は指定校の枠を減らし一般選抜を増やす動きも見られる。

これからの推薦入試の動向には注意が必要だ。

(要約)

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推薦入試の中でも指定校推薦や付属校からの内部推薦が増加している 

 

 推薦入試の拡大で注目される大学付属校。大学への内部進学の割合が増えているが、求められる学力の基準も上がり、勉強量も多く課せられるという。一方、指定校推薦は過渡期を迎え、退学者増加や学力不足も課題となっている。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「“推薦入試”時代の真実」。【全3回の第2回。第1回から読む】 

 

 * * * 

 前回記事では、大学受験で推薦入試が拡大する中で、増えているのは総合型選抜ではなく指定校推薦や内部推薦であることについて説明した。早慶上智ICUやMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)は内部推薦を増やしているし、日本大学や東海大学、帝京大学は一般選抜率が30%で、7割の学生が推薦で入学しており、付属校や系列校からの内部推薦と指定校推薦が多くを占める。 

 

 中学受験を取材していると、付属校に入学した生徒たちの嘆きの声を聞くこともある。 

 

「付属校に入ったら勉強しなくてよいっていわれたから頑張ったのに、嘘じゃないか。騙された!」 

 

 早慶付属のある学校では「高校入試で入ってくる生徒たちと同じ学力にするためには、自宅で1日2時間の勉強が必要」と説明されたそうだ。 

 

 また、中央大学付属横浜のサイトには「一般選抜でも中央に合格できるぐらいの学力にしていく」と明記されており、実際、中学入学後もしっかりと勉強をさせるため、「中学受験の頃より、中学の頃が勉強しているかも」という生徒もいる。 

 

 ある付属高校出身の男性は母校に子供を入れたが、こう驚く。 

 

「自分の高校時代は遊び呆けていました。でも、子供は宿題を泣きながらやっています。僕としては勉強はした方がいいと思うので満足ですが」 

 

 2010年代から付属校もより勉強をさせるようになっていったが、当初は「他大への進学を意識した学習」であったはずだ。2010年代前半は、早慶以外の付属校は「進学校化しないと生き残れない」と考えていて、進学に対して積極的だった。この頃から、内部推薦の権利を保ちつつ、外部受験していい付属校も増えてきた。 

 

 ところが今は違ってくる。外部受験を意識しない付属校もきちんと勉強させる。 

 

 なぜなら、付属校から大学への進学の枠が拡がった分、すべての生徒をきちんと育て上げて、優秀な学生として送り出す必要があるからだ。 

 

 あるMARCHの系列校のサイトでは「図書館で調べ学習をさせる」とあった。探究学習と書かず、調べ学習と書くところに真摯な姿勢が垣間見られる。調べ学習こそが大学での学びの基礎だからだ。 

 

 

 そして、付属校と大学の関係もなかなか一筋縄ではいかない。 

 

 ある難関私大の付属校の教師はいう。 

 

「何年か前に、看板学部に進学した生徒数人が怠けてしまって、成績不良や留年をしたことがありました。そうしたら、その学部への内部進学の枠を減らされました」 

 

 付属校も優秀な学生を送り込まないと淘汰されていく。そのため、高校側はよりシビアに生徒を教育していくわけだ。このように付属校の努力もあり、内部推薦の枠は拡がっていく。 

 

 そして、もう1つ、内部推薦を増やす理由は指定校推薦が過渡期に来ていることだ。 

 

 取材をしていると、早慶上智ICUやMARCHといったそうそうたる難関私大も指定校推薦の枠が余ることが目立つのだ。 

 

 地方の難関県立高校や都内の最難関高校ならそれも分かろう。地方の高校生は国立志向が高いだし、最難関で指定校推薦を取れるぐらいの評定平均値がある学生は東大や医学部志望が多いだからだ。 

 

 ところがだ。東大の合格実績がほぼなく、早慶が第一希望の生徒が多いような進学校でも指定校が余るのだ。 

 

 ある偏差値59ぐらいの高校で慶應の指定校推薦の枠が余り、教師たちが評定平均値が高い生徒に声をかけて枠を埋めたという話も聞く。少し前まではその高校では慶應の指定校は成績上位層の奪い合いだったが、今の高校生は「どこの大学かではなく、何をやりたいか」で進学先を選ぶ。天下の慶應の指定校でも行きたい学部でなければ、希望をしないのだ。 

 

 そんな指定校推薦だが、中堅大学では今までになかった動きがある。 

 

 神奈川大学は「年内学力入試」を始めるが、その理由として指定校推薦入学組の退学者が増えていることをコメントし話題になった。他の中堅大学でも同様な傾向があるという。退学者は全体の2%程度だが、指定校推薦での入学者が目立つという。 

 

 なぜ、そうなったのか。付属校からが数少ないなどの理由で内部推薦入学者を増やせない大学は指定校推薦を増やしてきた。その結果、指定校推薦での入学のハードルが下がったからだ。この話を聞いて思い出すのが、関西学院大学の動向だ。 

 

 関西学院大は、2020年には入学者のうちの推薦入試組の割合が65%だったが、2024年には46%まで下がっている。今は一般選抜の割合が過半数を超えているのだ。 

 

 この理由は、指定校推薦での入学者の学力が足りなかったために、指定校の枠を減らし、一般選抜を増やしたのではないかと推測される。関西を代表する名門の難関私立大学の関西学院大でも指定校の枠を拡げると、そうなってしまうのだ。 

 

 指定校推薦を拡大するのも実に難しい時代に入っている。 

 

今回は付属校の変化と指定校推薦拡大の難しさについて言及した。指定校推薦で入学した学生の退学者が増えているというのは衝撃的な話だ。第3回ではこの指定校推薦での退学者が増えている理由についてさらに見ていこう。 

 

【プロフィール】 

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。 

 

■第3回に続く:高校無償化で「都立高校志願者3000人減」の衝撃の裏に何があるのか? 学力中堅層が私立高校の単願推薦入試を選ぶわけは 

 

 

 
 

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