( 328651 )  2025/10/02 03:00:30  
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日本の物価高に対する対策が、自民党総裁選を通じて議論されています。

参院選での一律現金給付が評価されず、候補者たちは代わりに所得減税をアピールしていますが、実施には政治空白が影響していると批判されています。

消費者からは高騰する食料品の価格に対する不満が高まっており、特にコメの値上がりが家計を圧迫しています。

食料品の値上がりは広範に及び、様々な生活費が増加しています。

そして、日銀は物価の安定を図るが、金利が低いために円安が進行し、逆に経済に悪影響を及ぼす可能性もあります。

国民は迅速な対策を求めていますが、具体的な方策は未だに見えていない状況です。

(要約)

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店頭販売が始まった備蓄米を手にする購入客ら=大阪市西区のイオン大阪ドームシティ店で2025年6月、小関勉撮影 

 

 10月4日投開票の自民党総裁選では、物価高対策が大きな論点となっている。7月に行われた参院選では一律の現金給付を訴えた与党が敗北し、その後の政策対応が遅れている。総裁選で各候補は一律給付を事実上「封印」し、代わりに新たな所得減税のアピールが目立っているが、総裁選の実施そのものがさらなる「政治空白」を呼んでいるとの批判も出ている。 

 物価高で家計のやりくりに追われる庶民からは、「今助けてほしいのに」と嘆きの声が出ており、政局中心の党内抗争を冷ややかに見つめている。【鴨田玲奈、山下貴史】 

 

商店街を歩く買い物客ら=千葉県柏市で2025年9月18日午後4時46分、鴨田玲奈撮影 

 

 千葉県柏市のJR柏駅前にある柏二番街商店会。主婦や学生などでにぎわう商店街の一角にある食品スーパーは、正午近くになると買い物袋を抱えた主婦たちが多く出入りしていた。 

 だが、豚肉や調味料などを購入した68歳のパート主婦の顔色はさえない。「お米がやはりムチャクチャ高い。野菜も。本当に異常だよね」と嘆いた。女性は夫と孫2人の4人で暮らしており、孫は大学生と高校生。シングルマザーで苦労する娘の子供を引き取り育てているが「高校生は男の子だから本当に食費がかかる。3人前食べるから」と苦笑する。 

 特にコメの価格高騰は家計を圧迫している。毎日5合炊くため、5キロのコメは、買ってもすぐに無くなってしまう。一番の節約術は「安いものを見つけては買う」。食材は基本、自宅から近いスーパーで購入するが、出先でもスーパーを見かければ入り、もし安いコメがあれば、重くてもその都度購入し家まで持ち帰るという。 

 夫婦ともに年金をもらっているが、子供を抱えて家計に余裕はなく、今も働く。「食べ物を質素にして孫にかわいそうな思いをさせたくない」。自身は、お菓子はもちろん、おかずを食べることを我慢する日も多い。 

 記者はこの女性以外にも10人ほどの買い物客に声をかけたが、いずれも涙ぐましい節約術を続けていた。 

 大学から帰宅途中だった20歳男性は、家賃以外の生活費は全てアルバイト代でまかなっており、カロリーの高い菓子パンや、大量に作り置きしたパスタを具のないまま食べる日もある。「肉も野菜も高いので、スーパーで買えるものが少ない。コンビニなんて高くて行けない」と打ち明ける。 他にも「ふるさと納税で(ご当地産品などではなく)トイレットペーパーを買いだめした」(育休中の37歳女性)「スーパーは安さに応じて5店舗使い分けする」(66歳パート主婦)などの声が聞かれた。 

 

 

スーパーで買い物をする女性(写真はイメージ)=ゲッティ 

 

 食料品の値上がりに歯止めがかからない。帝国データバンクによると、2025年に値上げを予定している飲食料品数は、11月までの公表分で約2万品目。すでに24年実績(1万2520品目)を6割上回り、ロシアのウクライナ侵攻後の原材料高の影響が幅広く行き渡った23年(3万2396品目)以来の水準だ。農林水産省によると、24年夏の「令和の米騒動」で急騰したコメの価格は、政府備蓄米の放出効果で25年5月にいったんピークをつけたが、新米が出回り始めた9月以降、スーパーでの平均販売価格は5キロあたり4000円台を再び突破し、値上がり傾向に転じている。 

 値上げは食料品だけでなく、幅広い品目に及んでいる。ガソリン価格の高止まりや人手不足による人件費の高騰を受けて、足元でも地方のバスや電車の初乗り料金などの値上げの発表が相次ぐ。経営が苦しい中小企業だけでなく、高収益の携帯電話大手各社も今春以降、料金プランの値上げ発表が相次ぎ、かつて「値下げ合戦」を繰り広げた風景と一変している。 

 

物価高対策を巡る自民党総裁選候補者の主な主張 

 

 終盤を迎えた総裁選でも各候補は物価高対策を主要公約に掲げる。おおむね共通するのは、所得税の減税や低所得者向けの給付措置だ。与党は7月の参院選で国民1人あたり2万~4万円の現金給付を公約に掲げたが、これが評価されず与党過半数割れの一因となったこともあり、どの候補も事実上封印している。 

 一方、参院選で多くの野党が主張した消費税減税は、野党との協議に応じる考えを示唆する候補はいるが、声高に訴える声はみられない。消費減税は社会保障財源の確保や財政悪化などの課題があり、石破茂首相だけでなく森山裕幹事長が否定的だったほか、麻生派領袖(りょうしゅう)の麻生太郎最高顧問(元財務相)が「慎重姿勢を示しているから」(経済官庁幹部)。各候補が党内の得票上積みに奔走する中、党重鎮の顔色をうかがう思惑が見え隠れする。 

 こうした中で比較的中立的な所得減税が浮上した格好だが、具体的な減税額などは曖昧で、「生煮え」で打ち出した面が強い。 

 

 

給付付き税額控除に関する与野党協議=国会内で2025年9月25日、平田明浩撮影 

 

 衆参両院で少数与党となる中、新総裁がどんな経済政策を打ち出しても、野党の協力抜きには国会で関連法案は成立しない。所得減税と給付措置を組み合わせた「給付付き税額控除」を巡っては、立憲民主党と自民・公明両党が総裁選さなかの9月下旬に政策協議を始めた。立憲は、参院選の敗北で石破首相の求心力が低下して経済対策が十分進まなかったことについて「2カ月間時間を無駄にした責任は取ってもらわないといけない」(安住淳幹事長)と一定期間に結論を出すよう求め、今後も政治空白とならないようクギを刺す。ただ、連立政権の拡大を模索するしかない各候補が、最大のライバルである野党第1党・立憲との協議にどこまで本腰を入れるかは未知数だ。 

 「年収103万円の壁」の引き上げやガソリン税の暫定税率の廃止を巡って自公と幹事長合意した国民民主党の玉木雄一郎代表は「スピーディーな物価高対策がいずれの候補者からも見えないのが残念だ。合意を受け継ぎ実行することが国民に届く物価高対策だ」とけん制する。 

 

金融政策決定会合後、記者会見する日銀の植田和男総裁=東京都中央区で2025年9月19日、尾籠章裕撮影 

 

 物価の安定は本来、政府の財政政策ではなく、金融政策を扱う中央銀行の重要任務だが、「物価の番人」を自負していたはずの日銀はジレンマを抱えている。日本の金利が米国などに比べて低い水準に抑えられていることで円安が長期化し、日本が輸入する食料品などの値上がりにつながっている面があるが、逆に円高となれば輸出型企業の収益悪化などを招き、「景気を冷やして所得が減る」(植田和男総裁)可能性がある。9月の金融政策決定会合では利上げを見送った。 

 日銀は元々、物価下落(デフレ)が企業の売り上げ低下や賃金の伸び悩みを招き、日本経済の長期低迷につながったとみて、2%の物価上昇目標を掲げてきた。現在の物価高は、原材料価格などの高騰が主因で、経済活動が過熱しているわけでもないため、安易な利上げによる「デフレ逆戻り」への警戒感も根強い。 

 だが、大企業を中心に賃上げの動きは続くものの、足元の急激な物価高に追いつかず、これを差し引いた実質賃金はマイナス圏内の動きが長期化し、庶民の不満は募るばかりだ。 

 柏の商店街の八百屋から出てきた82歳の主婦はあきらめ顔でこう語った。「国の政策は全て時間がかかる。今苦しんでいるのだから、今助けてほしいのに」 

 

※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。 

 

 

 
 

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