( 329011 )  2025/10/03 05:00:34  
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自民党総裁選に立候補した高市早苗氏の発言が物議を醸している。

彼女は所見発表演説で、奈良公園の鹿への外国人観光客による暴行の可能性を指摘した。

しかし、東京新聞はこの発言を「排外主義的」だと非難し、その事実を確認した結果、外国人による暴力行為は確認されていないと報じた。

この報道に対して、取材していた須田慎一郎氏は、SNS上で外国人による鹿への虐待行為を示唆する証拠が多く存在していることを指摘し、記事の信憑性に疑問を呈した。

さらに、奈良県は条例を改正し、鹿の保護を明文化していることから、虐待行為が実際に存在している可能性がある。

須田氏は、東京新聞の報道が高市氏を不当に中傷する意図を存在すると主張している。

(要約)

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自民党総裁選に立候補し、所見発表演説する高市早苗前経済安全保障担当相=2025年9月22日、東京・永田町の同党本部[代表撮影] - 写真=時事通信フォト 

 

自民党総裁選で高市早苗氏の“奈良のシカ”をめぐる発言が注目を集めている。ジャーナリストの須田慎一郎さんは「東京新聞などのマスコミが高市氏の発言を報じ、炎上した。高市候補に対して『排外主義者』といったレッテルを貼り、批判する意図が感じられる。これは報道ではなく、“言われなき中傷”に近い」という――。 

 

 ※本稿は、須田慎一郎氏のYouTubeチャンネル「ただいま取材中」の一部を再編集したものです。 

 

■高市氏の「鹿発言問題」が尾を引いている 

 

 一向に沈静化せず、収束の兆しが見えない「高市早苗 自民党総裁候補の“鹿発言”問題」について、徹底的に取材を行った。発端は9月22日、自民党総裁選の所見発表演説の場において、高市早苗候補が、地元奈良市の奈良公園で外国人による鹿への暴行の可能性を指摘したことである。 

 

 正確な発言内容を紹介すると、「奈良の鹿を足で蹴り上げる、殴って怖がらせる人もいる。外国から観光に来て、日本人が大切にしているものをわざと傷つけようとする人がいるとすれば、それは何かが行きすぎている」というものであった。 

 

 この発言に対し、いち早く反応したのが東京新聞である。 

 

 9月23日付の朝刊記事2面において、「奈良のシカ虐待、人物未特定なのに……高市、外国人と決めつけ」との見出しが掲載された。この見出しを読む限り、高市早苗候補に対して「排外主義者」といったレッテルを貼り、批判する意図が感じられる内容であった。 

 

■東京新聞の見解は「外国人の暴行は横行していない」 

 

 では、事実関係として実際にそうした事案が存在したのか否かについてだが、東京新聞は「外国人の暴行が横行していることはない」という立場を取っているのである。 

 

 その根拠となっているのは、東京新聞の記者が奈良県側に取材を行い、そこで得られたコメントである。東京新聞はその取材結果をもとに、外国人による鹿の虐待事案は確認されていないという認定を下した。 

 

 奈良県奈良公園室の担当者は、「毎日2回公園を巡回しているが、観光客による殴る・蹴るといった暴力行為は日常的に確認されておらず、通報もない」と説明した。それを受けて、記事本文では「外国人による暴行が横行しているという事実はない」との見解が示されている。 

 

 すなわち、記事は「高市候補の発言は事実に基づかない、すなわち虚偽である」との認定を行っているわけである。 

 

■筆者のもとには多数の虐待写真が寄せられた 

 

 私が違和感を持ったのは、SNS上で多数の暴行に関する映像や写真が共有されていた点である。それらには、外国人による暴行行為を示唆する動画や写真、地元住民が撮影した画像などが多数含まれていた。 

 

 そこで私はこの件に関し、改めて取材を行った。その結果、多くの写真や情報提供が寄せられたことから、「本当に暴行行為はなかったのか」という疑問が生じた。 

 

 

■奈良県の公的記録を確認 

 

 奈良県および東京新聞記者の間で、どのようなやり取りがあったのかについても、公的な記録が「Q&A形式」で残されており、それを確認することができた。 

 

 この件に関して、朝刊記事が掲載される前日、すなわち9月22日頃、東京新聞の男性記者(記者名については把握しているがここでは控える)が午後6時頃に奈良県側へ電話をかけ、取材を行った。すなわち電話取材であり、記者が現地を訪れたものではない。 

 

 この取材に対応したのは、奈良県観光局奈良公園室である。誰が対応したかについても把握しているが、同様に公表は差し控える。 

 

 やり取りの全文記録があるわけではないものの、おおよその質疑応答の概要は記録として残されていた。 

 

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【東京新聞記者の質問内容】 

高市氏が演説で述べた“鹿への暴行”、特に“外国人による加害行為”について、実際の状況はどうなのか。 

 

【奈良県側の回答概要】 

高市氏から奈良県への直接の問い合わせはなかった。よって、発言がどのような情報に基づくものか、またその真意についても奈良県としては把握しておらず、コメントする立場にない。 

一方で、奈良県としては不適切な行為があることは認識している。 

しかし、県のパトロールや鹿愛護団体による活動の中で、「外国人が意図的に鹿を殴る・蹴る」といった行為を確認した事実はない。 

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 要するに奈良県の見解は、「そうした暴行行為を確認した事実はないが、断定的に“なかった”とも言っていない」というものである。すなわち、奈良県側としては状況を完全に把握しているわけではなく、あくまで「確認されていない」との立場を取っていることになる。 

 

■東京新聞の報道には悪意を感じざるを得ない 

 

 このように、公的な発言や取材内容が記事としてどのように編集・構成されたのかを検証することは、報道の信頼性を判断する上でも極めて重要である。 

 

 つまり、奈良県が公的に残した記録によれば、「外国人による暴行が横行している」との事実は確認していないが、不適切な行為そのものは認識している。東京新聞はこれをもとに「外国人の暴行は横行していない」と断定的に報じているが、その記述は不正確であり、意図的な誘導、あるいは悪意すら感じざるを得ない。 

 

 奈良県自身が「不適切な行為があることは認識している」と明言しており、加害者が日本人か外国人かは特定されていないものの、少なくともそうした行為が存在していることは否定していない。しかし、東京新聞の記事ではこの重要な点に触れられておらず、事実の一部を省略する形で報道がなされている。 

 

 

■「公園条例」が改正された背景 

 

 さらに、取材を進めた結果、多くの高市氏批判者が以下の事実を無視していることも明らかとなった。 

 

 実は奈良県は、令和6年4月(2024年4月)に「県立都市公園条例施行規則」の施行規則を改正し、「天然記念物『奈良のシカ』に対する加害行為を禁止する」内容を明文化している。この改正施行により、奈良公園内の鹿は天然記念物として法的にも保護され、虐待行為に対しては明確な禁止規定が設けられた。 

 

 繰り返すが、奈良県は鹿の虐待行為を明確に問題視しており、それを受けて条例も改正されている。この事実があるにもかかわらず、「虐待はなかった」と断定するような報道は、極めてバランスを欠いたものであると言わざるを得ない。 

 

 虐待という実態が存在しているからこそ、それを「立法事実」として条例改正という法的措置が講じられたのであり、そうした「立法事実」がなければ条例の改正など行えるはずがない。 

 

 つまり、奈良県の公園条例の改正は、虐待という現実の問題を踏まえた立法的対応である。これは非常に重要な点である。 

 

■DJポリスが出動し「英語・中国語」で注意喚起 

 

 さらに、こうした状況を受けて、奈良県では令和5年(2023年)7月の段階から、奈良県警による具体的な対策も実施されている。奈良県警では「DJポリス」と呼ばれる警察官が奈良公園に派遣され、拡声器を使って動物虐待防止のための注意喚起活動を行っている。 

 

 この注意喚起は日本語だけでなく、英語・中国語でも行われており、観光客に対して広く理解を促す体制が整えられている。注意内容としては、「鹿を虐待すれば文化財保護法違反に問われ、法的措置が取られる可能性がある」といった内容が含まれている。 

 

 こうした一連の対策は、鹿への虐待行為が現実に発生しており、しかも外国語による注意喚起が必要なほど、国籍を問わず複数の観光客による不適切行為が確認されているという背景を示している。 

 

 このような状況からも、奈良県および奈良県警サイドは、鹿への虐待行為の存在を事実として認識していることは明らかである。 

 

 

■「外国人が鹿虐待」の証言はある 

 

 それだけではない。取材を進める中で、新たに「外国人に対して鹿の虐待行為を注意した」という人物も現れた。地元で旅館を経営する若夫婦であり、ご主人と女将が、奈良公園内で鹿を虐待していた外国人観光客に対し、直接注意を促した経験を有しているという。 

 

 この件については、まだ当該人物への直接インタビュー取材は行えていないが、証言の存在自体は複数の関係者によって確認されている。ちなみに上記の人物は、顔出しでの証言も可能だと明言している。したがって、現場での虐待行為を実際に目撃し、対応した日本人が存在することもまた、立法事実の裏付けとなる。 

 

 再度強調するが、もしもそのような虐待行為が一切存在しないのであれば、「奈良県都市公園条例」の施行規則を改正するような法的対応がなされるはずがない。条例が改正されたという事実は、虐待行為が現実に存在していることを証明している。これは疑いようのない事実であり、法的にも社会的にも認識されている点である。 

 

 すなわち、「鹿への虐待行為が存在する」という立法事実は明確に存在しており、それが100%の確実性をもって条例改正へとつながっているのである。 

 

 したがって、この事案に関しては、もはや「虐待があったかどうか」という段階を超え、複数の証言と条例改正という立法事実によって裏付けられた、確定的な事実であると評価すべきである。 

 

■ネガティブキャンペーンとしては成功 

 

 これに対し、東京新聞は奈良県に電話を一本かけたのみで、「裏取りをした」との認識で記事を作成したと見られるが、その取材姿勢には大きな疑問が残る。あまりにも現場の実態を無視した、取材不足のまま報道がなされた可能性が否定できない。 

 

 さらに前提として、もし仮に東京新聞の取材が「高市氏を排外主義者と印象づける」ことを目的としていたとすれば(断定は避けるが)、その記事の構成や見出しに表れている一方的な視点も理解できる。 

 

 奈良県が記録として残しているやり取りの内容を確認すれば、東京新聞の記事において都合の良い部分だけが切り取られて掲載されたことは明らかである。 

 

 したがって、今回の一連の報道およびその拡散行為は、「言われなき中傷」に近いものではないかと考えざるを得ない。特に、自民党総裁選のような政治的に重要な局面においては、明らかに悪意を持った情報操作が行われる可能性が高まる。 

 

 つまり、高市氏に総裁になってほしくないと考える特定の勢力やグループが、「火のないところに煙を立てる」ような情報を意図的に流布し、それを拡散させて世論に影響を与えるという、戦略的・計画的なネガティブキャンペーンが展開されたと見ることも可能である。 

 

 このような手法は、情報が後に検証されて事実無根であることが判明したとしても、その時にはすでに選挙が終了しているという構造を持つ。先に仕掛けた側が有利になる構図が存在しており、これがネガティブキャンペーンの大きな特徴である。 

 

 このような偽情報の拡散行為には、政治的意図や戦略的な狙いが含まれている可能性があるという点を、ぜひ読者の皆様にも認識していただきたい。 

 

 

 

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須田 慎一郎(すだ・しんいちろう) 

ジャーナリスト 

1961年東京生まれ。日本大学経済学部を卒業後、金融専門紙、経済誌記者などを経てフリージャーナリストとなる。民主党、自民党、財務省、金融庁、日本銀行、メガバンク、法務検察、警察など政官財を網羅する豊富な人脈を駆使した取材活動を続けている。週刊誌、経済誌への寄稿の他、TV「サンデー!スクランブル」、「ワイド!スクランブル」、「たかじんのそこまで言って委員会」など、YouTubeチャンネル「別冊!ニューソク通信」「真相深入り! 虎ノ門ニュース」など、多方面に活躍。『ブラックマネー 「20兆円闇経済」が日本を蝕む』(新潮文庫)、『内需衰退 百貨店、総合スーパー、ファミレスが日本から消え去る日』(扶桑社)、『サラ金殲滅』(宝島社)など著書多数。 

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ジャーナリスト 須田 慎一郎 

 

 

 
 

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