( 329243 ) 2025/10/04 04:33:46 0 00 小泉進次郎氏 ©文藝春秋
〈党員向けには「右側で響くような言葉を使って」…高市早苗氏の巧妙な“二刀流戦術”とはなにか《自民党総裁選2025》〉 から続く
自民党総裁選の終盤情勢に異変が起きていた。序盤から小泉進次郎氏、高市早苗氏の2強構図が続いてきた党員票で、林芳正官房長官が急速に支持を伸ばしているのである。
「文藝春秋PLUS」の緊急特集で、JX通信社代表の米重克洋氏は興味深いデータを明かした。日本テレビとの共同調査によると、第1回調査で32%の党員支持を得ていた小泉氏は、第2回調査では28%に下落。そして第3回調査でも28%と横ばいに留まった一方、林氏は17%から23%へと6ポイントも急伸している。
(初出:「文藝春秋PLUS」2025年10月3日配信)
この変化の背景にあるのが、小泉氏陣営のいわゆる「ステマ疑惑」である。支援者にSNSでの書き込みを要請していたとされる問題が報じられたのは、まさに第2回調査の直後だった。
「本来小泉さんが取りたかった延びしろが取れなくて、林さんに流れた」と米重氏は分析する。特に注目すべきは、前回総裁選で石破茂氏に投票した党員の動向だ。当初は4割が小泉氏に、2割が林氏に流れていたが、現在では「小泉さん、林さん、ほとんど同じぐらいの割合しか流れていない」状況になっているという。
党員票の特徴について、米重氏は普通の選挙との違いを指摘する。「目移りをするというのがまず大前提」とし、「最初は小泉さんがいいと言っていた人でも林さんになるとか、最初は高市と言っていた人でも小泉さんになるとか、こういうスイッチが簡単に起きる」と説明した。
さらに追い打ちをかけたのが、9月30日に週刊文春が報じた神奈川県連での党員離党問題である。ただし米重氏は、このタイミングでの報道について「9月30日ということになると、かなりその投票が終わっている時期の報道」として、党員票への直接的影響は限定的との見方を示した。
問題は議員票への影響だが、「党員の扱いがどうだった、こうだったという話については、議員票に影響する程度は限定的」と分析している。
調査結果から推計される党員票は、高市氏110票前後、小泉氏88票前後、林氏72票前後となる見込みだ。党員票でリードする高市氏だが、議員票では小泉氏が「圧倒的に優勢」とされており、最終的な決戦投票の行方は議員の動向次第となる。
一方、高市氏を支持する議員が小泉氏を公然と批判するなど、従来の総裁選では見られなかった対立の先鋭化が顕著になっている。選挙戦術レベルを超えた価値観の相克が、選挙後の党運営に重大な影響を及ぼすとの懸念が広がっている。
米重氏は「かなり高市さん寄りだと言われている自民党議員がXで、それこそ説明を強く求めるような投稿をされたりとか、やっぱりそういった調子でやっていると議員同士でも立場が開いてしまう」と分析している。
今回の総裁選で露呈した党内対立は、新政権の統治能力に深刻な影響を与える可能性が高い。米重氏は「果たしてこの総裁戦こんな感じでやって自民党にとって良かったんだろうかっていう感じがします」と懸念を表明している。
決選投票では小泉氏と高市氏の組み合わせが最も可能性が高いとされるが、どちらが勝利しても党内の修復には相当な時間を要するとみられる。政策の方向性だけでなく、政治手法や価値観をめぐる根深い対立が顕在化した今回の総裁選は、自民党の結束力に長期的な影響を残すことになりそうだ。
「文春オンライン」編集部
|
![]() |