( 330276 )  2025/10/08 06:51:01  
00

自民党初の女性総裁に就任した高市早苗氏は、物価高対策に注力する意向を示し、中小企業支援やガソリンの暫定税率廃止を提案しました。

彼女の経済政策は前政権とは異なり、積極財政を重視しています。

株価は期待感から上昇し、日銀の利上げ抑制も影響しています。

高市氏の財政方針は、景気刺激策を重視する一方で、財政赤字の拡大という課題も抱えています。

具体的な政策としては、消費税減税は難しそうですが、ガソリン税廃止や年収の壁引き上げが進む可能性があります。

また、給付付き税額控除も提案されていますが、実現までに時間がかかる見込みです。

高市氏がどう政策を推進していくのかは注目されます。

(要約)

( 330278 )  2025/10/08 06:51:01  
00

MBSニュース 

 

 女性初の自民党総裁となった高市早苗氏(64)が就任後に開いた会見では「物価高対策」に力を注ぐと明言。中小企業を支援するための自治体向け交付金の拡充やガソリンと軽油の暫定税率廃止などを挙げました。 

 

 経済政策についてこれまでの政権とは大きく違う考えを持つという高市新総裁。終わらない物価高に終止符を打つことはできるのか?ジャーナリスト・武田一顕氏を交え、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏への取材を含めまとめました。 

 

 高市早苗新総裁の誕生で経済政策はどう変わり、国民の生活にどう影響していくのでしょうか?新総裁決定の影響が顕著に現れたのが日経平均株価です。10月6日には初の4万8000円台まで上がり、上げ幅は2000円以上でした。 

 

 なぜ株価は上がったのでしょうか?そもそも高市氏は、今回の総裁選に立候補したときに「責任ある積極財政」とはっきり発言していました。簡単に言うと、国としてお金を使っていきますよという趣旨なので、景気が上がるだろうという期待から株価の値上がりにもつながります。 

 

 もう一つ、5日の高市氏の会見で、日銀の利上げをけん制するような発言がありました。海外と日本の金利の差が大きければ大きいほど、円を持っておくよりも、海外のドルなどで持っている方が利息が増えていくので、円が売られ、円が安くなります。悪いことのようにも聞こえますが、日経平均株価というのは大企業の株価中心です。大企業は輸出が多いので、円安になると得をするという二重構造で6日の株価は一気に値上がりしました。 

 

 積極財政という言葉が出ましたが、対になるのは財政健全派(財政規律)という言葉です。 

 

■財政健全派(財政規律) 

・国の借金や財政赤字を増やさない 

・税収に見合った支出が基本 

メリット:将来世代の負担を避ける 

デメリット:景気後退の可能性 

 

■積極財政派 

・景気回復や成長のために支出や減税 

・借金をしてでも景気刺激策を行う 

メリット:経済活性化・雇用拡大 

デメリット:財政赤字の拡大 

 

 近年の岸田政権や石破政権はどちらかというと財政健全派寄りの立場に立っていました。政治ジャーナリストの武田一顕氏は、「アメリカが典型なように、海外を見るとタカ派は財政健全派で支出をあまりせず、積極財政派というのはいわゆるハト派の人。しかし日本はタカ派がお金をいっぱい使おうと言って、それで国家統制を強めようというのが、日本は他の国と違うところ」と話します。 

 

 

 近年、積極財政派だった総理と言われるのが安倍晋三氏です。 

 

■アベノミクスの“3本の矢” 

①金融緩和…日銀が金利を抑え、経済活性化 

②財政出動…国がどんどんお金を使う 

③成長戦略…規制緩和や投資で“足腰”を強く 

 

 財政出動、つまり国がたくさん借金をしてお金を使おうとすると、金利は上がっていくものですが、これをしてさらに金利も抑えようということで、「異例」と言われていました。世界的に見ても、これらを両方行うというのは普通は緊急事態に行われることのようです。 

 

 賛否両論、功罪入り混じると言われたアベノミクス。木内登英氏は、アベノミクスの「功」について、一時的に円安・株高で企業業績や雇用環境が改善したことを挙げます。一方で「罪」については、実質の経済成長がなかったことと、持続的な成長のための構造改革が不十分であったと分析しています。 

 

 岸田元総理も石破総理も、アベノミクスについてはっきりと「失敗だった」とはしていない中、財政健全派寄りに変わっていきました。そうした中で安倍元総理よりも積極財政派の高市氏が総裁に選ばれたということで、非常に大きな転換だといえます。 

 

 ただ、積極財政にも課題があります。財政が悪化するリスクはもちろん、金利抑制(円安)は大企業にとっては良い側面もありますが、日本は様々な原材料や石油などを輸入しているので、買うときに物価が高くなってしまうリスクがあります。 

 

 このような課題をどうしていくのか。高市氏の“責任ある積極財政”という言葉には、必ずしも放漫にお金を使いまくるわけではない、ということが含まれているのかもしれません。 

 

 では、高市新総裁は具体的に何をどうしていくのでしょうか。まず消費税の減税については、難しそうだというのが木内氏の見立てです。高市氏本人も会見で「自民党の税制調査会では消費税の軽減税率分の引き下げについては多数意見とならなかった」「選択肢としては放棄せず対応できることをまず優先したい」と述べています。 

 

 さらに野党側からも消費税の減税については強くは言われておらず、武田氏は「高市氏を支えることになるとみられる麻生太郎氏や鈴木俊一氏は元財務大臣で、財務省の影響がある人は消費税の減税なんか絶対言わない」と話します。 

 

 

 続いて、ガソリンの暫定税率の廃止について。高市氏は「ガソリンも軽油も価格を引き下げる」、「法律が変わるまでの間は補助金も検討」と前向きな発言をしています。 

 

 ガソリンと軽油で1.5兆円の税収が減るとされる中で、財源はどうするのかという課題があります。財源は税収の上振れ分や基金を使うとされていますが、その増えた分は来年も増えるのかという意見や、そもそも「入り」より「出」の方が多いのが日本で、決して余ってるわけではないという意見もあります。 

 

 そしてもう一つ進みそうなのが、いわゆる「年収の壁」の引き上げです。高市氏はも178万円まで引き上げるという3党合意のときに賛成と言っています。 

 

 武田氏は年収の壁の引き上げについて、「ちょっとだけ上げて、国民民主党は『178万円まで引き上げることで合意しただろう』と怒っている」とした上で、「国民民主党を自公に協力させるためには、もっと上げなければいけないので、国民民主党を取り込むために高市氏は積極的に動いている」と分析します。 

 

 ただ、木内氏は「お金持ちほどお得になってしまう制度設計」と課題をあげました。年収(給与所得)ごとの減税額を比べてみると以下の通りになります(去年10月投稿:国民民主党・玉木代表SNSより)。 

 

▼年収200万円 

現在の税負担9.1万円 

控除引き下げ後の税負担0.5万円 

減税額8.6万円 

 

▼年収300万円 

現在の税負担17.4万円 

控除引き下げ後の税負担6.1万円 

減税額11.3万円 

 

▼年収500万円 

現在の税負担38.0万円 

控除引き下げ後の税負担24.7万円 

減税額13.2万円 

 

▼年収600万円 

現在の税負担51.1万円 

控除引き下げ後の税負担35.9万円 

減税額15.2万円 

 

▼年収800万円 

現在の税負担91.4万円 

控除引き下げ後の税負担68.6万円 

減税額22.8万円 

 

▼年収1000万円 

現在の税負担141.5万円 

控除引き下げ後の税負担118.7万円 

減税額22.8万円 

 

 年収が多くなればなるほど、減税額が大きくなることがわかります。物価高で低所得者が困っているとすると、高所得者ほど恩恵を受ける制度設計でいいのかどうかという点も含めて議論の余地があるのではないかと指摘する専門家もいるようです。 

 

 

 そして、高市氏が総裁選の公約として掲げていた「給付付き税額控除」という政策。具体的な設計はまだないので例を挙げると下記の通りとなります。 

 

 例:負担軽減額10万円の場合 

・所得税15万円の人→納税5万円、減税10万円 

・所得税5万円の人→給付5万円、減税5万円 

・所得税なしの人→給付10万円 

 

 ただ、富裕層や大企業からの反発が出ることが考えられるほか、実現まで2~3年以上の時間がかかりそうだということで、目の前の物価高対策としては期待できなさそうです。 

 

 少数与党として経済政策の実現に向けての命題と考えられることの1つは「対野党」です。誰と手を組むか、政策の相性的には国民民主党と言われています。6日に麻生氏と国民民主党の榛葉氏が会談をしたという報道も出ています。 

 

 連立について武田氏は「自公が連立したときは、小渕恵三氏が総理でしたが、小淵さんは『ブラックホール総理』と言われていました。つまり、野党の言いなりになってその結果として公明党を引き込んだ」とした上で、「どれだけ野党の言うことを高市氏が飲めるか。ただ、高市氏は性格的にそういうことができないし、政策に詳しいから、むしろきちんと詰めちゃうタイプ。そうすると連立は難しい」と指摘しました。 

 

 そして、自民党内でも向き合わなくてはいけないのが「対麻生氏」。高市氏の後ろ盾になっている麻生氏ですが、積極財政派ではありません。日銀への介入も、麻生氏はどう感じるか…と木内氏はいいます。 

 

 また、10月27日の来日が調整されているトランプ大統領とどう渡り合っていくのか。トランプ大統領は日本や各国に防衛費増額を求めています。つまりアメリカから武器を買ってくださいということですが、実は高市氏も防衛費を上げたいと発言しています。一方で、防衛費は上げても日本経済への波及効果は弱いと言われているので、外交手腕だけでなく、お金の使い方も注目されます。 

 

 武田氏は最後に「今まで言ってきたことできないじゃないかという指摘もありますが、やる方法は実は一つあるんです。それは総理大臣になったら衆議院を解散して総選挙をやって勝つ。これはもう最大の政治的パワーを得ることになりますから、それを高市氏がどこかの時点でできるのかどうかというのが問われるんです」と今後について話しました。 

 

 

 
 

IMAGE