( 330476 )  2025/10/09 06:01:37  
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住宅ローンの変動金利が上昇しており、高市早苗政権のもとでその動向が注目されている。

金利を抑えるには財政赤字削減が必要だが、高市氏が積極財政を推進する限り、それは難しい。

都心のマンション市場では、融資姿勢の見直しが進む一方、タワマンの投資目的の転売が問題視されている。

地方都市と比べて東京都心での不動産価格は急騰しており、富裕層や高収入サラリーマンが市場に流入しているが、投資目的の買い替えで融資が認められない事例も増えている。

金利上昇により住宅ローンの負担が増加している中、将来的には人々が抱える負担がさらに重くなりそうだ。

金利は今後も上昇する可能性が高く、住宅ローン金利の低迷は過去のものとなる見込みである。

(要約)

( 330478 )  2025/10/09 06:01:37  
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集英社オンライン 

 

住宅ローンの変動金利がジワジワと上がっている。高市早苗政権ではどうなるのか。不動産事情に詳しいジャーナリストの築地コンフィデンシャル氏は「金利上昇を抑えるためには財政赤字の削減が不可欠だが、高市次期首相が積極財政を掲げる限り、難しいだろう」と解説する。なぜなのか。そして住宅ローンは今後、どうなるのか。  

 

都内では新築でも中古でも1億円を超え、「下がる要素がない」とまで言われていたマンション市場に変調が生じている。発端となっているのは、都心のタワマン相場を下支えしていた銀行の融資姿勢の見直しだ。 

 

一部の銀行が「タワマン転売」を問題視し、融資を絞り始めたことが明らかになっている。「令和の貸し渋り」が始まりつつある中、住宅ローン金利の上昇も相まって、マンションを購入した人々の返済負担はジリジリと重くなってきている。 

 

「銀行がローンを貸してくれないせいで、人生計画が狂った」 

 

東京都・勝どきの某人気タワマンに住むAさんはこう憤る。近隣のタワマンへの住み替えを検討していたが、新居の住宅ローンの審査が下りず、諦めることとなったのだ。 

 

事前審査では何の問題もなかったものの、本審査になると各行とも融資を断ったり、想定よりも融資額を引き下げられたりで、望むような条件で住宅ローンを組むことができなかったという。 

 

銀行側は理由を明かしていないが、「短期間での買い替えの場合、銀行側が転売を警戒しているのでは」と仲介会社からは説明を受けたという。この仲介会社でも、このようなケースは初めてではないという。 

 

マンション価格が急騰する中、新築マンションを購入し、すぐに転売することで利益をあげる手法がもてはやされ、都心の人気のタワマンに転売目的の人々が群がっているのは周知の事実だ。 

 

東京カンテイによると、8月の東京都心6区の中古マンション(面積70㎡換算)は前年同月比33.5%増の1億7030万円だった。実需が中心であるさいたま市や千葉市の同時期の上昇幅が4〜5%程度だったことからも分かる通り、東京一極集中が加速している。 

 

都心部の不動産の高騰は投機マネーの流入によるものだ。 

 

もっとも、投機マネーといっても、タワマン投資の場合、富裕層や海外投資家、中国人といったプレーヤーだけではない。 

 

年収1000万円を超えるエリートサラリーマンが住宅ローンを使って将来の値上がりを見越した半分居住、半分投資の「半住半投」のプレーヤーがこのマーケットに押し寄せたのだ。 

 

年収1000万円を超えているというだけで1億円、夫婦とも高収入のパワーカップルであれば2億円を融資するという銀行の姿勢があったからこそ、豊洲や勝どきのファミリータイプの3LDKが2億円近い価格で取引される現在の市況が肯定されていた。 

 

しかし、あまりにも急激な価格上昇は、ひずみをもたらした。購入と売却を繰り返す「空中族」の中には1年間で2回、3回と融資を受けて転売を繰り返すという、住宅ローンの理念から外れた取引も増えていた。 

 

引き渡し前の新築タワマンの「含み益」を前提に、次に値上がりしそうな物件を探すといった、限りなく黒に近いグレーな話すら一部のインフルエンサーが「投資手法」として広げていた。 

 

 

銀行側も手数料収入が見込めるため、これまでは収入を証明する書類さえあればグレーであろうが融資する姿勢を続けていた。 

 

しかし、住宅価格の高騰が政治マターになり、都政や国政レベルでもテーマとして取り上げられるようになった中、銀行側も政治や行政からの圧力を受けて審査を厳格化せざるを得なくなったとみられる。融資が絞られると必然的に、野放図な転売は阻止されることになる。 

 

Aさんの場合、今回の引っ越しはより広い部屋を求めてのものだったが、その部屋は分譲価格から3倍近い価格で取引されており、引っ越しに伴い売却となれば1億円近い利益が出る予定だった。まだ入居から2年も経っていなかったため、転売目的だと銀行側に受け取られた可能性がある。 

 

銀行の融資姿勢の変化は、転売防止だけではない。足元では金利上昇というファクターが加わっている。みずほ銀行は10月1日、変動型の住宅ローン金利を0.25%引き上げた。新規契約者に適用する最優遇金利は0.775%となり、2015年12月以来の高水準だ。 

 

「金利が上がって、さらに月に1万円も支払いが増えるのは正直厳しい」 

 

東京都港区、芝浦のタワマンに住むBさんはこう嘆く。 

 

Bさんは2022年に9500万円のローンを組んで自宅を購入したが、当初24万円程度だった月々の支払いは2度の利上げで26万円程度になるという。 

 

住宅価格の高騰で数千万円の「含み益」を得ているBさんだが、中学受験を控えた子供の教育費をはじめ絶対に削れない固定費が多く、「儲かっているという感覚はまったくない」とため息をつく。 

 

みずほ銀行は21年に変動金利を当時の最低水準だったネット銀行並みの0.375%に引き下げるなど、メガバンクの中でも住宅ローンの貸出に積極的な銀行として知られていた。しかし、金利上昇局面に転じると態度を一変、金利引き下げ競争から身を引きつつある。 

 

住宅ローンを主力商品と位置づけるネット銀行も同様だ。 

 

PayPay銀行やSBI新生銀行、auじぶん銀行といった各行が競うように低金利競争を繰り広げ、24年には0.2%台で貸し出していた銀行もあったが、現在は最も低い銀行でも0.5%台となっており、かつて低金利の代表格だったauじぶん銀行は今年に入ってすでに2回金利を引き上げ0.8%台となっている。 

 

利上げにより各行とも収益環境が悪化する中、「無理をしてまで貸さない」という戦略が浸透している。 

 

 

今後も住宅ローン金利の引き上げは続く可能性が高い。日銀が9月に開いた金融政策決定会合では、9人のメンバーのうち、2人の審議委員が利上げを提案。 

 

後日公開された議事録では、「前回の利上げから半年以上が経過していることもあり、そろそろ再度の利上げを考えてもいい時期かもしれない」「海外対比で低水準の実質金利の調整を行い得る状況と考える」といったコメントもあった。 

 

日銀の利上げに慎重姿勢を見せる高市早苗政権が誕生することで利上げのタイミングが後ズレする可能性はあるものの、政策金利を上げなければ円安が進み、インフレが加速しかねない。市場の焦点は政策金利を「上げるか上げないか」ではなく、「いつ上げるか」に移っている。 

 

既に将来の金利の先行指標である長期金利は上昇が続く。2016年から約6年間、0%台だった30年物国債の金利は上昇傾向にあり、現在は3%台で取引されている。 

 

金利上昇を抑えるためには財政赤字の削減が不可欠だが、次期首相となる見込みの高市氏が積極財政を掲げる限り、難しいだろう。インフレが収まらない中、近い将来、0%台の住宅ローンは過去のものとなるだろう。 

 

現在、住宅ローンを借りている人の約8割が変動金利を利用しているとされるが、今後、彼らは金利上昇のたびに支払いの負担が重くなることになる。Bさんの場合、住宅ローン金利が1.5%となれば、月々の支払額は30万円となり、現在よりも4万円程度高くなる計算となる。 

 

昨今の賃上げブームによりBさんの勤める大手ソフトウェア企業も賃金を引き上げているが、若手社員に比べ、中堅社員の引き上げ幅は限定的だ。 

 

月々の給料が上がったとしても、そこから税金や社会保障費が引かれるため、現状の賃上げペースでは、住宅ローンの支払い負担が手取りの増加額を上回る状況となるのは確実だ。 

 

タワマンを購入すればすぐに数千万円の含み益が誕生し、転売を繰り返すことでサラリーマンでも億を超える財産を築くという時代は終わりに近づいているのかもしれない。 

 

取材・文/築地コンフィデンシャル  

 

築地コンフィデンシャル 

 

 

 
 

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