( 331013 ) 2025/10/11 06:34:19 0 00 空母「山東」。同空母は2019年に就役した。7月3日撮影(写真:ブルームバーグ)
今年9月11日、尖閣諸島の魚釣島から北西約200㎞。海上自衛隊のP3C哨戒機が上空から初めて確認したのは、東シナ海を航行する中国の最新空母「福建」の姿だった。
この「福建」は中国にとって3隻目の空母である。2012年就役の初の空母「遼寧」、19年就役の「山東」よりもさらに大型で、戦闘機や早期警戒機などを計60〜70機搭載できるとされている。
中国の国防予算はこの30年間で28倍に増えている。その急激な軍拡を象徴する軍事アセットが空母だ。日本の防衛白書(25年度版)によれば「将来的な原子力空母の建造計画が存在するとの指摘もある」という。
■空母は「一種の外交手段」
活動も活発化している。24年の1年間に、太平洋で中国の空母から艦載機が発着艦した回数は1200回を超えた。最近は危険な行為も目立ち、今年6月には太平洋の公海上で、日本のP3C哨戒機が、空母「山東」から発艦した戦闘機に距離約45mまで接近された。また、約900m前を横切るような飛行もあった。ほとんど例のない出来事とされ、防衛省・自衛隊が警戒を強めている。
そもそも空母は「航空母艦」の略称で、洋上の巨大な基地のような存在だ。有事の際に戦力投入や攻撃の拠点となるだけでなく、軍事プレゼンスを示して相手に圧力をかける「一種の外交手段」(政府関係者)だとの捉え方もある。そうした極めて強力で影響力の大きい軍事アセットを3隻も保有している事実は、中国の軍事大国化の象徴ともいわれる。
一方の日本側はどうか。アメリカ海軍横須賀基地に原子力空母「ジョージ・ワシントン」が配備されているが、日本自身は空母を保有していない。旧海軍はゼロ戦などを空母に搭載して運用していたが、戦後は憲法上の戦力不保持との整合性もあり、保有に慎重な姿勢を取ってきた。
■「いずも」「かが」は「多用途護衛艦」
現在政府は、日本最大の護衛艦である「いずも」「かが」の2隻を改修して、短距離離陸・垂直着陸が可能な戦闘機F35Bを搭載する計画を進めている。それでも政府は、この2隻について、あくまで「多用途護衛艦」であり「空母ではない」との立場を取っている。
ただ、従来の方針とは異なるこうした動きが防衛省内で出ていることが東洋経済の取材でわかった。すでに公表済みの26年度予算の概算要求にも、気づかれにくい表現で本格空母導入の検討に向けた記述が盛りこまれているというのだ。
26年度予算の概算要求に盛り込まれた記述とはどのようなものなのか。本記事の詳報版は東洋経済オンライン有料版記事「【判明】戦後初、本格空母導入の検討が防衛省内で始まる可能性があることが判明。来年度予算の概算要求の一文に防衛省がにじませた意図」でご覧いただけます。
伊藤 嘉孝 :東洋経済 記者
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