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PTA活動には様々な課題があり、一部のPTA役員が退会しようとする保護者や非加入会員に対し、子どもへの差別をちらつかせるケースもある。

退会すると子どもに不利益があると脅され、進級祝いの贈り物や運動会のメダルを渡されないなどの不当な扱いが行われている事例もある。

PTA問題に詳しい人も、このような差別は許されないと指摘しており、学校はPTAが差別を行うのを止めるべきだとしている。

(要約)

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運動会に参観した家族を案内するのもPTAだ。PTAを退会したら、「子どもに不利益がありますよ」と脅されて……(写真はイメージ/gettyimages) 

 

 PTA活動にはさまざまな課題があり、過渡期にある。一部のPTA役員たちの熱意や義務感が暴走して、退会しようとする保護者や非加入会員に対し、「子どもへの差別」をちらつかせるケースもある。 

 

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*   *   * 

 

■職場に「役員決め」の電話 

 

 鹿児島市に住む岩元美紀さんは、数年前の5月、子どもを通わせている幼稚園のPTAに退会を申し出た。園では初めての退会者だった。 

 

 きっかけは、「バザーの役員決め」の電話が、携帯電話ではなく、仕事中の職場にかかってきたこと。この幼稚園では各家庭から持ち寄った物品を販売したり、ゲームなどの出し物をしたりする「PTAバザー」を毎年開催していた。PTA会費は半年ごとに3000円を支払っていた。それまでほかの保護者と同様にPTA活動に参加してきたが、「あまりに非常識」と感じた。 

 

 だが、12月上旬になって、「退会をとりやめてほしい。会費の納入をお願いしたい」という趣旨の手紙を、園長から手渡された。 

 

 10日後には、園長やPTAを仕切る保護者たちが、職場の昼休みに押し掛けてきた。保護者たちはこう言った。 

 

「退会するんですってね。退会したら、お子さんに不利益がありますよ」 

 

■進級祝い「ぼくのはある?」 

 

 園長まで、「幼稚園の行事で4月にPTAから贈られる進級祝いや月ごとの誕生日会のプレゼント、運動会でのメダルも渡せない」と言う。 

 

 残念ながら、それは脅し文句ではなかった。 

 

 幼稚園児たちは4月の進級祝いでは絵の具セットを手渡される。でも、「うちの子は何もなかった」。 

 

 その日、岩元さんが息子を園に迎えに行くと、「ぼくのはある?」と、心配そうに尋ねられた。 

 

 最初は何のことかわからなかったが、棚に整然と並べられたほかの子どもたちのかばんを見て、理解した。かばんには進級祝いの大きな絵の具セットが入っていた。 

 

「ぼくのは『おうちにあるよ』って、先生が言ってた」 

 

 

■退園し、自宅で保育 

 

 岩元さんはやるせなさに震えた。 

 

「こんな小さな子どもに、大人たちがいじめみたいなことをするんだ、と思いました」(岩元さん) 

 

 岩元さんが市の保育幼稚園課に相談、仲裁を頼んだところ、またしても園長やPTAの役員ら6人が職場に現れた。役員らは、「あなたのせいですごく傷ついている」と岩元さんを責め立てた。 

 

「親子でこれ以上、嫌な思いをするのは耐えがたかった」(同) 

 

 岩元さんはその日のうちに退園を決心。小学校入学までの半年間は自宅で保育した。 

 

■学校は「差別」を抑止すべき 

 

 PTA問題に詳しい大塚玲子さんによると、非加入会員の子どもへの差別は(1)物品を渡さない、(2)登校班などの活動に参加させない、という2つのパターンがあるという。もちろん、「どちらの差別にも強く反対します」と訴える。 

 

「全国の複数の教育委員会は『非加入会員の児童に対する差別禁止』の通達を学校長に出しています。学校はPTAがそうした差別を行うのを止めるべきですし、抑止力になるべきです」(大塚さん) 

 

 だが、それでも暴走した正義感は歪みを生む。千葉県在住のヨウコさん(仮名、40代)は数年前、小学校PTAで本部役員になった2年目に、信じられない現場を何度も目の当たりにした。 

 

 ヨウコさんがPTAの本部役員になった理由は、「子どもたちのために何かできればいいなと思った」からだ。2年の任期のうち、1年目は平穏に過ぎた。だが、翌年、AさんがPTA本部の実権を握ると、雰囲気が一変した。 

 

「押しの強い人で、仕切り屋。意に沿わない意見が出ると、形相を変えてバサッと切るんです」(ヨウコさん) 

 

■「仕事はできないなんて許されない」 

 

 PTAの今後について話し合っているときのことだ。同じマンションに、障害がある兄弟を育てている保護者や、親の介護をしている保護者もいたことから、ヨウコさんはこう提案した。 

 

「PTAの仕事をやりたくても無理がある人たちもいるから、会費だけ払ってもらい、仕事を免除したり、減らしたりしたらどうか」 

 

 Aさんは「無理」と一蹴、「会費は払うけど仕事はできないなんて許されない。PTAに入らない親の子どもは『差別しなくちゃダメだ』と言ったんです」(同)。 

 

■そんなPTAはいらない 

 

 Aさんの「差別」は続いた。災害に備えて水や缶パンなどの防災備蓄品をPTA予算で購入することを検討したときはこう言った。 

 

「PTAに入っている家庭の子どもには配るけれど、PTAに入っていない子どもにはあげない」 

 

 市のスポーツ大会に出場する6年生のユニホームをPTA予算で買い替える話が出たときは、こう言った。 

 

「この子の親はPTAに入っていないから、新しいユニホームは着せられない」 

 

 ヨウコさんは言う。 

 

「こんなPTAは子どもたちのための組織ではない、ですよね」 

 

 結局、ヨウコさんは精神的に参ってしまい、本部役員を退任した。ヨウコさんはせつせつと語る。 

 

「PTAは子どもを差別してはいけない。そんなPTAはいらないと思います」 

 

(AERA dot.編集部・米倉昭仁) 

 

米倉昭仁 

 

 

 
 

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