( 312429 )  2025/08/01 07:04:21  
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日本航空(JAL)とANAホールディングス(ANA HD)は、2026年3月期第1四半期の決算を発表し、両社ともに売上高が過去最高を記録したが、国内線の収益性には課題が残っている。

国際線が業績を牽引する中、国内線は物価高やコロナ禍によるビジネス客の減少で苦戦しており、JALとANA HDは「赤字になる可能性がある」と警告。

政府からの支援が減ることも懸念材料となっている。

業界全体で持続可能な運営を目指すためには、各社の収益向上策やネットワーク効率化が求められている。

地方の需要喚起も重要な課題とされている。

(要約)

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国内線は収益性が課題になっている(写真は福岡空港) 

 

 日本航空(JAL)とANAホールディングス(HD)の航空大手2社が相次いで発表した26年3月期第1四半期(25年4~6月期)決算は、ともに売上高が過去最高を更新した(JALは経営破綻後)。JALは前年同期比11.1%増の4710億円、ANA HDは6.2%増の5487億円だった。 

 

 好調な業績は国際線がけん引しており、両社そろって国内線の窮状に言及。物価高でコストがかさんでいる上、コロナ禍で単価の高いビジネス客が減り、レジャー客向けの薄利多売を余儀なくされていることが主な原因だ。 

 

■「低価格セールでレジャー需要を喚起し、高い搭乗率を維持」 

 

 決算によると、JALは国内線旅客の売上高が1342億円で前年同期比7.6%増。旅客数は13.3%増え、利用率も9.7ポイント改善した。ANAの国内線旅客は売上高が1619億円で、6.8%増えている。旅客数は4.7%増え、利用率も2.8ポイント伸びた。 

 

 7月30日に記者会見したJALの斎藤祐二副社長によると、それでも国内線は「収支ライン『トントン』というような状況」で、 

 

「補助もだいぶ減ってきており、その部分も加味してギリギリ黒字ラインに乗るか乗らないか、というところで、実質的にはなかなか利益は確保できていない」 

 

と説明した。 

 

 7月29日に会見したANA HDの中堀公博グループ最高財務責任者(CFO)も、 

 

「新幹線との競争や人口減少により、国内航空市場は恒常的に供給過多の状態にあり、路線別の利益率は低下している」 

  「ビジネス需要が回復しない中、低価格セールでレジャー需要を喚起し、高い搭乗率を維持しているのが実情」 

 

などと訴えた。25年度については 

 

「政府からのご支援も減ってくるということになれば、赤字になるだろうと想定している」。 

 

と説明。第1四半期は増収だったものの、 

 

「費用も人件費や外部委託費中心に増加をしており、整備費もまだ高止まりしている。国内線が非常に収支として厳しい状況には変わりない」 

 

とした。 

 

 

 5月末には、国内線の持続可能性を探ろうと、国交省が「国内航空のあり方に関する有識者会議」を立ち上げたばかりだ。 

 

 有識者会議への期待を問われたJAL斎藤氏は「業界全体として各社の収益が上がっていくようなスキーム、対応をどう作るかというところがポイント」だと指摘。ネットワークの効率化や空港使用料の減免、航空機燃料税の軽減などの必要性に言及した。 

 

「路便(路線・便)ネットワークのあり方であったり、公租公課についても国際と国内を比べた場合、国内の方が負担が大きいというところもあるので、そういうところの見直しとも含めて、国内線についての持続性を高めていくようなものを、これからご検討いただけるとありがたい」 

 

 ANA中堀氏も 

 

「国内線の事業環境は業界全体の課題であり、官民一体となって取り組んでいく」 

 

と話した。 

 

 JAL斎藤氏は、インバウンド(訪日外国人)のうち、JAL国内線を利用しているのは4%に過ぎないことに言及。新幹線の利用率が高いことは「これはある意味、日本の魅力のひとつで、致し方ないところはある」とする一方で、「新幹線で行かない、行けない地方路線は、やはりいっぱいある」とも指摘。需要が大都市に集中する中で、地方の需要喚起が必要だとした。 

 

(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司) 

 

 

 
 

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